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蹉跌集め -51- [小説]

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悠奈は藤熊と共に赤坂に在るMUZIKにいる。
日本では斯界歌唱力ナンバーワンのベテラン女性シンガーを抱える事務所だ。

社長の薗畠が応接室にやって来る。

「いやあ、藤熊ちゃん、元気?ご足労だったね、悠奈ちゃん。」

悠奈は立ち上がり、深々と礼をした。

薗畠はしばらく藤熊と業界内の話などをした。その話の節目節目で悠奈をチラッと見た。
ある話で笑えるオチとなったところで、悠奈に向き合って、

「ね、悠奈ちゃん、こういうことがあるんだよ、この業界はね」

と言った。悠奈は「はい・・・」と言って、愛想笑いをした。美しい笑みだった。

「悠奈ちゃんねー」

薗畠は一転表情を硬くし、真剣な眼差しで呼びかけた。

「ウチはね、高遠遙香の事務所でね、当たり前だけれども、新人なら歌唱力の有る者を
とらないと事務所としての自己否定になっちゃうのね。」

「はい。」

「あのデモ、一発録りだったって?」

「はい、そうでした。」

「・・・すごいじゃない。」

「ありがとうございます。」

「ウチはね、女性ヴォーカリストの事務所でしょ。
その辺りのノウハウは積み上げてるのね。
ま、ヒロシ(MNEMOのこと)とか男性ヴォーカルもやったんだけど、あいつの場合は
アンラッキーなこともあったし、結局うまくいかなかったんだけど、本音を言うとね、
事務所の得手としてはやっぱり女性シンガーなんだよね。」

藤熊が軽く笑う。

「で、悠奈ちゃんはそのMNEMOとも偶然知り合ったんだって?」

「はい。多摩川で本当に偶然に・・・。一緒にいた男の子が、MNEMOさんが
書いたブログ小説の名を言ったことで、MNEMOさんが話しかけてきて。
その後藤熊さんと同様に多摩川の反対岸で全くの偶然に。それもその男の子が
MNEMOさんの小説の題名を口にしたのを藤熊さんがお聞きになってー。」

「そういうことってあるんだね。ヒロシは小説なんか書いてんだねぇ。」

薗畠は感慨深げにコーヒーを啜って言った。

「ヒロシも悠奈ちゃんになんか言った?僕のこととか。」

「きっと最高の選択肢になると。」

薗畠は「ハハ!」と笑って、

「あいつには持ち出しばっかりになったけれど、こうして悠奈ちゃんとの縁をくれて、
ようやく恩返ししてくれたよ。」

藤熊が大笑いする。悠奈は戸惑う。

「ぜひ、やらせてほしい。ホムラーと早速交渉に入るから。」

悠奈はただただ勿体ない話だと思い、頭を下げた。
この縁の始まりをどこから辿ればいいか分からなかったが、あまりにも運命的な出来事が
続いて、それらがみな自分を飛躍させてくれている実感があった。だから、その一連の
ことの今の帰結として、MUZIKとの縁を大切にしたいと心から思っていた。

「ど、藤熊ちゃん、これからうまい蕎麦を出す飲み屋で一杯。」

「あ、いいですねッ!どう、悠奈ちゃん。」

「はい、もちろん、お供させてください。」



赤坂のとある裏通りにその店は在った。
薗畠は焼酎を飲み、機嫌よくいろいろなことを話した。

「僕はね、悠奈ちゃん、長崎の出身なのね。」

「そうですか。九州は薗や園の字が入る姓の方が多い気がしましたが、やはり。」

「ああ、知ってた?僕の家は長崎で、佐世保なんだけれどね。親戚に長崎市内に住む
者がいて、原爆でやられてしまってね。母の実家なんだけれども。」

悠奈は悲痛な表情で応えた。

「さらにね、僕の家は遠い先祖からクリスチャンでね。ま、僕はそうはなら
なかったんだけれど。聞くところによれば、殉教したり、酷い拷問を受けて<転んだり>
したんだそうだよ。それでもこうして僕がいるんだから、死に絶えなかったけれどね。」

悠奈は光のことを思い出していた。

「僕の家は有馬家の家臣だったらしい。家臣って言ったって、どのくらいの身分かは
知らないけれどね。クリスチャン大名のね、あの有馬。晴信は転ばなかったけれど、
二代目以降はもう転んじゃって、ウチの先祖はもう右往左往だったって。」

悠奈は「有馬」という名が出てきてしまっては、また運命の糸が自分を新たに何処へか
引っ張ろうとしているとしか思えなくなった。

「有馬って、あらま、光君の姓だよね。」

藤熊がおどけて言ったが、今回は悠奈をお追従でも笑わせられなかった。

「誰?」

薗畠が訊いた。

「悠奈ちゃんの知り合いでして。その有馬光くんのことで悠奈ちゃんたちは多摩川へ行き、
そこでMNEMOと全く偶然に会うんですよ。」

「ふ〜ん、なるほどね〜。」

薗畠がいつものように「なるほど」の「な」を強めに発音して言った。

「その人が有馬姓なんだ。」

「はい。悠奈ちゃん、驚いちゃってますね。」

「ねえ、悠奈ちゃんー」

薗畠がやさしく呼びかけた。

「縁ておもしろいものだね。僕はもちろんその有馬くんとなんかつながるかどうかは
知らないんだけど、つながるであれ、そうでないであれ、おもしろい。
九州の北西部や西部のある人間たちにとっては、信仰や原爆の問題は重い。
僕は音楽には政治を持ち込まない主義だけれど、でもね、恋の歌や自然賛歌は、
自動的に平和や反戦、反原発を歌うことになると思っているよ。

僕らの商売は、それこそ平和がなくては成り立たない。昭和天皇が崩御された時、
歌舞音曲は慎むべきものとされちゃったでしょう?・・・あ、まだ生まれてないか、
悠奈ちゃんは。そのことを今上天皇はいかがなものかって思われていて、
実にすばらしいと思うんだがーそれからJohn Lennonね。Imagineがフォークランド
戦争の時、放送禁止になったじゃない?あ、また全然生まれてない頃の話か。
まあ、とにかく、逆に音楽が、歌が、戦争で使われてしまったらそれは音楽の自殺だよ。

讃美歌に勇ましいものなどない。歌えば心の安息につながるものばかりだ。
なにも悠奈ちゃんに神を讃えてほしいなんて言っていないよ。僕だってもはや
クリスチャンではないのだし。僕は強いて言えばagnosticだ。不可知論者だ。
けれども不思議はあるし、大事だと思っている。それが歌の、藝術の源泉だから。」

悠奈は薗畠のことばに感動し、涙腺が緩むのを感じている。

「不思議を歌おうよ、ね、悠奈ちゃん。恋だって不思議だ。いろんな恋の歌が
今まで歌われてきたけれど、悠奈ちゃんの恋の歌、Twelve Times a Year
悠奈ちゃんしか作れなかった、人類史上初の恋の歌だ。
僕はそれを高く高く評価する。」

悠奈はやはりハッキリ泣いてしまった。
薗畠はその姿をしみじみ可愛いと思いながら、ぬるくなった焼酎を飲んだ。


<つづく>




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あんぐりー(腹は立ち、口は開く)

なんだかすごい図でしたね、
ウルトラ・アナクロ国家主義者の籠池さんが真ん中で、共産党の小池さん、
バリバリ護憲の福島さんがにこやかに向かって左脇を固めているなんて。
正に敵の敵は味方。しかし、互いが蛇蝎のような存在同士の集合を見ていると、
呉越同舟なんていう言葉ではちょいと、いや、大いに不足ですな。
しかしまあ、このことも含めて、ほんとにあべぴょん政権では極めて稀なことが
次々と起こるものです。

Twitterを読んでいると(と言っても私がチョイスしたtweetersのですが)、
「総理を侮辱したから証人喚問する」っていう自民党の理屈ってなんだって。
ほんとだね。自分が支持した学校の寄付金をしたって理事長に言われるのが
そもそもなんで「侮辱」?ことばの遣い方めちゃくちゃ。
そいからさ、あべぴょんを侮辱すると呼ばれるの?
そんなことより、タダ同然、補助金まみれのあの事件を解明するため、
血税の私物化があったかどうかを解明するためだろうが。

いやはや。
こんなことを言う国対委員長がそのまままたまた看過される日本て、すばらしい国だね。
もちろん反知性の人々にとって。
ということはおいらにもおこぼれがあるかな。
要らねーけどよ。


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