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<途中で>筆者は語る

あの・・・

わかってます。
小説、「蹉跌集め」、展開がほとんどビョーキですよね。
シリアスさがそれなりにあったのに、十三をそのまま悠奈の恋人にしてしまうのが
嫌になって、光と幸嗣の生き霊の祟りで狂わせてやろうと思ったのが運の尽き。

でもこんな素っ頓狂な展開の小説もないでしょう。

それが価値だと自分では思うしかありません。

またシリアスなところももちろん出てきます。
おフザケとのバランス、ストーリーとしての抑揚が全体的に落ち着けば、と思います。
まあ、失敗作であっても別にだれも傷つきません。
情けなく思うのは私だけですから。

あ、ただ、楽しみにしてくださっていた数少ない方々、
そして富山弁指導の労をとってくださったMooさん、浩美さんには
大変申し訳ないことだと思っています。

でも、浩美さんがいみじくも、「トキちゃんが好き」と言ってくださった。
トキちゃんのあたたかさ、ふつうさ、自然な滑稽さを物語全体に広げたかったって
いうのはあるんです。

私の造形したキャラクターを名を挙げて好きになってくださった浩美さんのお言葉が
とてもうれしかったのです。

へんてこ極まる話になっていますけれど、どうか、もう少しお付き合いを。


なお、田舎の叔母(父の弟の妻)が亡くなりました。
90歳に近いはずで、しかたのない別れです。
土曜日の告別式に列席します。
父、兄、母の葬儀では本当にお世話になった叔母でした。
92歳になる叔父もさぞかし力を落としていると思います。
励ましたい、そう思っています。






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蹉跌集め -37- [小説]

37

悠奈が暢子と文雄で楽しく食事をしている。
スマートフォンが震えた。
悠奈が発信者を見る。
・・グッタリする。

「どうしたの、悠奈。」

「無視、無視。」

悠奈はそう言って、これも暢子特製近江の瀬田蜆ごはんを食べ続ける。

「母さんのシジミごはん、郷愁ってやつね、その味わいにシジミするわ。」

「しみじみでしょ。何くだらないシャレを言ってるの。」

暢子が我が娘らしくない<情けなさ>に少し戸惑った。

「シジミごはん、味付けはアッサリ。I'm ハマグリ〜。うまくて目がクラムー。」

「ちょっと、悠奈!」

暢子も文雄もいよいよ深刻そうに娘の奇態を見つめ出す。
スマートフォンの振動音がまだ聞こえている。

「相当しつこいから、緊急じゃないの?」

「メーデー、メーデー、メーデーたーや、卒業アンドmajor debut。」

いたたまれなくなって、暢子がスマートフォンを取って応答する。

「は、はい。どちらさま。」

「悠奈ちゃん、龜井です。返歌を送った龜井です。今お話してカメへんか。」

「は?」

「変なメール送っちゃったの、生き霊のせいなんだ。生き魑魅(すだま)、魑魅魍魎、
チミは知っていたざんすか。シェーッ!」

暢子はあまりの気持ちの悪さに電話を切った。
悠奈がカッと目を見開いて、

「何、何、今何があった?」

と暢子に訊く。

「龜井っていう人が、もうほとんど、いや完全にイッちゃってることをペラペラとー。」

なんという展開だ。

悠奈は俄然こんなことに終止符を打ちたくなった。
スマートフォンを手に取り、元自分の部屋へと階段を上る。
ドアを閉め、すぐに龜井に電話する。

「あ、悠奈ちゃん、うれしいよ。掛けて来てくれて。
そのままウチまで駆けてこい。」

「龜井さん、あなた、どういう了見?」

「ワンワン、僕はイングリッシュ・セッター。」

「私が食べてたシジミの産地は近江の瀬田。ち、ちがうでしょ!」

「ゆ、悠奈ちゃん、ぼ、僕、ダジャレ病に罹らされたんだ、生き霊に・・・。
ア〜〜〜〜〜ッ!」

「どうしたんです、龜井さん!」

「・・・思い当たる人はいない?ウウ〜〜〜〜ッ!」

龜井はダジャレ病の発作に激しく抗う。

「生き霊って間違いないんですか?」

「間違いないッ。二人だよ、二人。最近<フったり>した?アアア〜〜〜〜ッ!」

「負けるな!」

「ハア、ハア・・・。3度のハモりで、foolって僕に悪罵を投げつけた。
切支丹坂で聞いたんだ、そのときからおかしくなった。空耳じゃない、ハモりで
ございます。流浪の番組・・・。ウウウ〜〜〜〜ッ!」

「光君と幸嗣さんだわ!」

「だ、だれ、それ?」

「JAPPSってバンドのメンバーよ。ホームページ持ってるわ。」

「JAPPSね。ひかり・こうじね。NTT東日本。」

「関係ないわよ。」

「光通信で僕に電波を・・・。許せん。」

「ダジャレ病が治ったら、また考えるわ。」

「治す、治すよ。あのメールの僕は僕じゃない。パク・クネはボクじゃない。」

「ほんと、治る?」

「治らいでか。さすらい刑事、捜査開始。ウオ〜〜〜〜ッ!」

電話が切れた。


<つづく>




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蹉跌集め -36- [小説]

36

悠奈が十二社の実家にヘトヘトになって帰って来る。

「どうしたの、そんな目に隈をつくって!」

暢子が、居間に入るなりソファーにへたり込んだ娘の顔を見て言った。

「話し合いがそんなに不調だったの?」

「デビューは確実よ。」

悠奈が力なく答えた。

「ちっともうれしそうじゃないじゃない。」

「先のことが思いやられるからよ。」

「まあ、それはそうね。デビューは門出に過ぎないものね。
お祝いの支度してあるから、ダイニングの方に来て。」

「大丈夫かい、悠奈。」

父親の文雄も顔を出した。

「なんだ、調子悪そうだな。」

なんとか悠奈が立って、三人はダイニング・ルームへ移動する。

「お腹減ってないんだよね。」

悠奈がご馳走を前に虚ろな声で言った。

「食べられるだけ食べて、じゃあ。」

暢子が言う。

三人で乾杯ー
まず悠奈は暢子特製の味噌汁を啜った。「特製」というのは、暢子は豆腐を短冊切りに
するからだ。暢子の実家藤原家の仕来りであって、悠奈はその豆腐の形状による食感が
いちばん豆腐を美味しくさせると信じている。

「久しぶり。おいしい。」

暢子は満足げだ。

「それを皮切りに、ね、できるだけ食べて。ごはん、よそおうか。おいしい福島米。」

「福島?・・・さすがね、母さん。」

悠奈は感心した。

「だって、ばかばかしいじゃない?検査済みでなんら他のところの米と違わないのに。
6年前の放射性物質の拡散だって、なにも福島の県境でその物質が越境してはならない
なんて思うはずもないんだから。福島のだとよろしくないんなら、茨城、宮城、栃木、
千葉とかの米だってそうでしょう?実際はもっと拡散していたんだしね。」

「福島のどこの米?」

「『JAいいで』っていうところのお米でね。産地は、えーと、耶麻郡西会津。」

「ちょっと待って!」

悠奈はスマートフォンをすかさず操って、MNEMOのブログ・トップページから
「耶麻郡西会津」で検索をかけ、『トーホグマン』の一話からそこがMNEMOの故郷で
あることを三十秒かからず調べ出した。

「すごい!MNEMOさんのふるさとのお米なんだ、これ!」

「だれ、ねもさんて。」

「まあ、大先輩ミュージシャンってとこかな。」

「・・・。」

「うん、おいしい。」

「2010年にな、原発事故の1年前な、会津の米が新潟の魚沼についでうまさ2位だって
あのセンテンス・スプリングがランク付けしてたんだよ。」

文雄が言った。

「お父さん、その『センテンス・スプリング』とかって、ダサいから言わないで。
父さんらしくないよ。週刊文春でいいよ。」

「・・・すまん。」

「で、皮肉にもその次の年、原発事故で福島の農業は崩壊するのね。」

「隣県新潟は、再稼働させないでがんばってるな。」

「うん。」

「鹿児島は挫けたけど。まるで禁門の変の後みたいだ。」

「うん。おもしろい。そういうのがお父さんよ!」

悠奈はうれしくなった。
文雄は学部は違うが悠奈の先輩で、複数の茶の小売店を経営している。歌舞伎町も
含めた新宿西部で手広く顧客を持っているのだった。悠奈が紅茶を好むので、
文雄は「British Teas」というコーナーを各店舗に設けて販売もするようになった。
悠奈は愛しい娘だし、頼りになるアドヴァイザーでもある。

「静岡も6年前、放射性物質が降ってきて、騒ぎになったなあ。大変だった、
ウチもね。静岡の仕入先が出荷できないってなってさ。」

「あたしね、反原発の歌、歌いたいって思ってるの。」

そう言って悠奈が母の漬けた近江の白菜重ねを食べた。

「うん、母さんのお漬物はやっぱり真似できないわ。大葉がすごく効いてる!」

「おばあちゃん秘伝だからね。」

「豆腐の短冊切りもね。」

「で、悠奈、そんなメッセージソング、いきなりやっていいの?」

「あからさまに反原発っていう歌詞ではやらないよ。艶は秘してこそ、でしょう。」

「花じゃないの・・・。反原発のメッセージが艶?」

「會津のお米のこととか、近江の白菜のこととかを例えば歌うでしょ。」

「うん。なんかお腹空きそうな歌ね。」

「例えばよ。そうすると、原発はあってはならないっていうメッセージが
秘匿されるのよ。」

「あらま、大きな飛躍ね。」

「それは詩の作り方次第なの。」

文雄が笑い出す。佐藤家はいつもこうだ。
悠奈は随分と気分が軽くなっていた。




十三は寝室で横になっていたが、はっとあることに気づき、上半身を起こした。
自分はキリシタンに恨まれる覚えは一切ない。名前だけだ。
名前だけで祟られてたまるか、と。

悠奈の歌を遮ったあの大音量の2声コーラスは怨霊のしわざだと。
そう思って、またシャレを言っている自分に気づき、落ち込んだ。
祟りは「ダシャレ病」に罹ることなのか。
それに罹患している限り、きっと悠奈は自分に近づかなくなるー
そう思えた。

死霊か生き霊か。
十三は後者であろうと推量した。悠奈のことだ、彼女の心を射止めんとするライバルが
複数いてもなんら不思議はないと。

「源氏物語か!」

十三は苦々しく吐き捨てた。
吐き捨ててシーツを見ると、薄紫色だった。

「紫敷布。」

そう口にしていた。無意識だった。

「重篤だ、重症だ、十三重病!」

シャレとは言えないまでも頭韻(alliteration)でまた言葉遊びをしている。

悠奈言う
ダジャレ言うなと
悠奈言う

なんで君は遠いんだ
次のこの句は脚韻だ
どうせ僕は客員だ
正規にしてはくれないんだ

「ああ!最後は字余りになった、クソッ!」

十三は次々言葉遊びの句が次々浮かび、収拾がつかない。
生き霊の凄まじい怨念を思い知った。
どうしたら祓えるのだろうか。

「そうだ、悠奈に心当たりを訊くしかない!
供えの花は菊しかない!」

十三は泣きながら意を決して電話をかけた。


<つづく>




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