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蹉跌集め II-4 [小説]

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最初は永からの手紙だった。

「MNEMOさん、まずは心からお見舞い申し上げます。
日本でも小さな扱いではありましたが、『SF反核集会で発砲 主催者死亡、日本人
ミュージシャン重傷』と報道されました。第一報を偶々耳にし、私はすぐMNEMO
さんのことだと直感し、居ても立ってもいられなくなりました。

もちろん親族でもなんでもない私がSFへ向かうことなど僭越なことですから、
藤熊さんにこの手紙を託したのですが、目をケガされ、お読みになれないのですから、
音声にすべきだったかと後悔しております。身近な方にどうか代読していただきますよう。

T2aTの視聴回数が爆発的なものとなっており、メッセージもすさまじい
程の数が書き込まれています。激励、共感のことばばかりと言いたいところですが、
売名がうまくいってよかったな、などという卑劣なもの、それでも原爆投下は
正しかったというものも散見されます。

私はホムラーの社員としての可能性も探りますが、ひとりの人間として、
『日本人』として、どうSUBTLYのこれからに微力を尽くせるか、考え、行動していく
つもりです。・・・私がMNEMOさんの目になります。

どうぞくれぐれもご自愛なさいますように。
無事帰国される日を待っております。

音吏部 永」


次は悠奈からだ。

「MNEMOさん、本当にひどい仕打ちを受けられて、おいたわしくて、
私は毎日泣いております。反核を主張することで銃撃されてしまうというこの
<人類状況>に絶望したくなります。でも、ここで挫けてはならないと自分に
言い聞かせています、何度も何度もT2aTを聴きながら。

昨日は十二社へ帰って、熊野様、そして坂上へ行き成願寺にお参りしました。
今晩は木野先生、チロちゃん、そしてオリオンにもMNEMOさんへのご加護をお祈り
します。

神仏も、MNEMOさんを見守る御霊も、今回のことでは無力だったのでしょうか。
まさに『沈黙』のように、ただ黙っておられただけなのでしょうか。
人知では測り知れない意図というものが共有されているのでしょうか。
私は全く途方に暮れてしまいます。

でも、祈り続ける。
Peace & Loveが遍く達成された世界を想像し続ける。
そして歌い続ける。

私にはそれしかありません。
MNEMOさんがそうであるように。

どうぞお身体をおいたわりください。
ご帰国をお待ちしております。

悠奈」


MNEMOは唸り声を上げる。
小梅屋は目頭を押さえながら、手紙を封筒に入れる。
MNEMOの様子から小梅屋は次を読むのをしばらく控えた。

「次はー」

小梅屋が言うと、MNEMOは「まだあったの?」と意外そうに言った。

「ああ、ケンスキーくんか。」

「いいえ、次のは宮澤幸嗣という人です。」

「え?誰だっけ。」

「『RAJOY ギター』とありますが。」

「ああ、RAJOYのギタリストね。うれしいな。なんだって?」

「MNEMOさん、この度は本当にお気の毒な事態になってしまい、心からお見舞い
申し上げます。RAJOYのメンバーもみな衝撃を受けて、デビュー目前期ですが、
どんな作業も手につかない、気もそぞろというような有様です。

主義主張のためなら暴力も許されるという思想ー
これは私としては大きな大きなテーマであり続けました。少なくとも、反核、不戦を言う
人間に対して暴力を用いることの卑怯さには我慢なりません。無力な者、
無辜の民への攻撃もあってはならない。それはもう自明です。だから、僕はそういう
卑怯者を粉砕したくなる。けれど、それではそういう輩と同じになってしまうー
暴力で解決しようという点において。

僕はライフルではなくギターで彼らを粉砕する。
そう心の底から志しました。

MNEMOさんのおかげです。

どうぞご養生ください。

宮澤幸嗣 (RAJOY ギター)」

「ライフルでなく、ギターで、か。
イーグルスのGlenn Freyのようなことを言ってくれて。」

そう言ってまたMNEMOは嗚咽し始めた。


<つづく>



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