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蹉跌集め -58- [小説]

58

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「ここご(の)ふぁーぼはふ(麻婆茄子)がふ(好)きあ(な)んだ。」

光が熱々トロトロの茄子を口に入れながら言った。

「ハハ。光、なんか吹っ切れてんな。」

周平が言った。

嚥下して烏龍茶を飲み、光が言うー

「ウチの母さん、クリスチャンなんだけど、バプティストでな。
横浜にQuest for Truth学園っていうところの参与をやってるんだ。」

「ああ、探真学園のことか。」

芳樹が言った。

「ウチの姉ちゃんが入ろうか迷って、結局横浜協立に行ったけど。」

芳樹は生粋の神奈川県人だ。津田芳樹の実家は横浜の戸塚区に在り、代々そこで
暮らして来た。「戸塚区は横浜とは言い難し」などと揶揄されるが、先祖は東海道
沿いで旅籠を営んでいた。「おりゃあ、ちゃきちゃきの戸塚っ子だ」とよく言う。
「横浜港なんぞ、江戸の末期までなかったんだ。ま、神奈川湊っていうのは
あったけれどな。だから神奈川区、それから金沢区は許す、昔っからあっから、
戸塚と同じで」などと。

「そこの元同窓会会長で聖古(せこ)さんていう人がいて、この人が俺らの
ライブの映像を見てくれたんだ。そしたらな、ぜひプロデュースさせてほしいって
母さんに言ったんだって。去年辺りからプロデューサー業を始めて、タレントを
探していたっていうんだ。」

「へえ。じゃあ、藤熊さんがレコード会社を橋渡ししてくださったら、
もうバッチリじゃん。」

芳樹が<横浜弁>で言った。

「聖古さんが言うには、JAPPSは男前だし、演奏力も確かだって。」

みな笑いを押し殺すようにする。

「ただなー」

光が言い淀む。

「何。」

周平が促す。

「聖古さん、なんと、なんとだよ、SUBTLYとやったことがあるんだって。」

「ええッ!また出来過ぎのストーリー展開かよ!」

周平が仰天して叫ぶ。

「勘弁してよ。」

「SUBTLYとは契約していないのか。」

芳樹が訊いた。

「トウが立っている男のバンドはやれないって。」

「は?」

「いやさ、SUBTLYはもうそういうの超越しちゃってるからって。」

「なるほど。」

「バプティストつながりで、そういう音楽求められたりってのは?」

幸嗣が訊いた。

「それはない。ただ聖古さんは福島原発被災者救済に力を入れてるよ。」

みんなは反対する理由がなく、いい話だと言い合って、光に対応を一任した。

「それで、SUBTLYとのジョイントだけれど、聖古さんぜひ見たいって。」

「あ、それだけどー」

ケンスキーが言った。

「MNEMOさんによると悠奈も出るって。」

光と幸嗣が固まってしまう。

「悠奈は事務所が決まって、そこの社長も観に来るとか。
それから、SUBTLYには新メンバーでHenryさんが加わるようだよ。
EUROYのヴァイオリン、キーボード担当の。すげぇグレードアップするぜ。」

「ち、ちっくしょう!」

幸嗣がたまらず叫んだ。

「負けてたまるかよ、JAPPS!聖古さんに見せつけようぜ、俺らの力!」

「悠奈にもな。藤熊さんにも、その悠奈の事務所の社長にも。」

光が言った。

「もちろんSUBTLYにも!」

Henry加入で自分のSUBTLY加入がなくなったケンスキーが言った。

「オオッ!」

みんなが気勢を上げた。
姑娘がお盆を抱えて目を丸くしていた。


<つづく>




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