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蹉跌集め -45- [小説]

45

十三はMNEMOのブログを読んでいてずっと考えていた。

「悠奈の目指すシンガーとしてのありように重なる文章が多いなあ。これは相当に彼女が
影響を受けそうだ。なにしろ悠奈の佐藤家は信夫佐藤の流れ、
信夫とは福島北部のこと、北東部もかすめる。すさまじい線量の放射能が降り注いだ
ところだ。MNEMOと一致して反原発の音楽活動をしそうだなあ。」

一方MNEMOは「阿弖流為」で、

「そうなんだ、悠奈さんのお家は信夫佐藤の流れなんだ!いやはや、それはそれはー」

と悠奈の話に感激していた・

「もちろん東北は、特に宮城と福島には佐藤姓がやたら多いし、信夫佐藤の流れを自認する
人も多いよ。まあ、なにしろ大元は藤原秀郷の流れってことだけれど。」

「わ、トーホグマン、ですね。」

「ありゃ、読んでくださってるの?そっか、恥ずかしいけど、うれしい。
じゃあもう読んだかもしれないけど、僕の父方の祖母は霊山町っていうところの
出身でね。今は伊達市となっていますけれど。まさに信夫佐藤の地域です。
ただし祖母の旧姓は橋本でしたが。

僕が小学生の時ってね、首相と云えば佐藤栄作さんだったのね。長期政権でね。
長州の政治家だって言うから、やっぱ佐藤姓って全国区なんだなあって思ったよ。
けどね、その栄作さん、佐藤家は信夫佐藤の末裔だって言ったのね。源義経の家臣のー」

「忠信ですか?」

「うわあ、すごいね、知ってた?」

「義経さんを逃がすため囮になった、狐忠信。私の先祖もそうなんですよ。」

「本当!?すごいなあ、それは。でね、安倍首相は長州出身であることをすごく
自慢に思ってるけど、おじいちゃんの岸信介さんは旧姓佐藤なんだよね。
佐藤栄作首相の兄だから。そして安倍さん。安倍家は安倍貞任の末裔だと、
自分で言ってる。奥州の安倍ですよ、ええ。『俘囚長』の家柄かもしれないんだ。
蝦夷の頭ですよ。だから昔僕は書いた。安倍さんは父方も母方もルーツは奥州
ですよ、もっと東北に目を向けてってね。」

「私の直接の先祖は、忠信の子義忠の六代裔(すえ)長信だそうです。この人は
伊達宗遠に攻められ花沢城を追われ、岩代国へ岩城氏を頼って逃げたのだそうです。」

「岩代国って僕の故郷ですよ。」

「そうですよね、會津を含む福島の西半分ですよね。そこから武蔵国まで南下した
長信の子がいたそうです。鈴木九郎さんを頼ったのでしょうか。」

「なるほど。室町中期くらいの話ですね。僕の母の父も佐藤姓なんです。
近衛兵でした。母はその父の軍服姿の写真を病床に臥す部屋に飾り、
ずっと眺めていました。相当に誇りだったんでしょうね。その佐藤家は、
やはり室町期に興っています。」

「すごい!」

「なんだよ〜、二人で<佐藤話>で盛り上がっちゃって!<甘い>感じだな〜。」

藤熊が嘴を入れる。

「僕だって藤の字が入ってるんだから、まぜてよ〜。」

「藤熊さんは蘆名氏ですからね。桓武平氏でしょ。」

MNEMOが笑って撥ねつける。

「決めつけんなよー。MNEMO説の信憑性は高いって俺も思うけど、家の口伝では、
京都の藤原なんだぞー。」

藤熊がそう言って、白州の水割りをグッと飲んだ。

「りゅうくん、お替りね。えっと、芋のお湯割りで!」

りゅうくんは「ハイ」と答えて、藤熊のためにRolling Stonesをかける。
Out Of Our Headsだ。藤熊は手と上半身だけで踊り出す。

「りゅうくん、最高!満足!Satisfactionだよ、イエイ!」

「藤熊さんは蘆名の一派だよ。」

MNEMOが悠奈に囁く。

「そうじゃなきゃ、僕との縁の説明がうまくいかない。」

悠奈が笑う。

「なんでも先祖の縁とかで説明する愚は知ってるよ。でもね、単純におもしろいじゃない。」

悠奈は頷く。

「藤熊さんはね、蘆名=佐原氏の分家なんだ。會津坂下に所領を持ち、そこの地名を
名乗ったんだ。金上氏も同じ。やっぱり伊達に、このときは政宗だけれど、
蘆名は滅ぼされるんだね。そのとき金上氏は狐戻城あるいは麒麟山城、あるいは
津川城という当時會津西端の城を追われる。関東へ逃げたのさ。そこしかないからね、
伊達の追っ手が来ないのは。日光・二荒山を経て上野・桐生の山へと逃げて、
そこで神社の神官となっていくんだな。」

「ブログで拝見したと思います、その説。」

悠奈が目を輝かして応える。

「そうなんだ。なんだか恥ずかしいなあ。まあ、自分で公開してんだし、
しかたないね、この恥ずかしさに耐えるのも。」

「それで結局藤熊さん、MNEMOさん、そして私のつながりが説明できるんですね。
みんな岩代と會津に縁を持つ。」

「そう。そして木野先生だね。木野先生&鈴木九郎さん。」

MNEMOはそう言って、藤熊の踊りを真似て腕による「自転車漕ぎ運動」をした。



十三はこうなったらMNEMOの「HNFプロジェクト」に自分も参加しようと思った。

「敵の懐に入って戦うんだ!」

十三は悠奈の関心がMNEMOに移っていることを確信していたのだ。

「ブログに書き込もう。趣旨賛成、自分の英米などの友人ネットワークや、
仏教関係の友だちのそれを駆使し、協力したいです、と。」

光も幸嗣も同じ頃同じくMNEMOのブログを読んでいた。そして二人も全く十三と
同じ論法で或ることを考えていたー JAPPSとSUBTLYのジョイントだ。

「タイバンやれば、必ず悠奈が来る!」

涙ぐましいことであった。


<つづく>



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