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2017 神無月野分前夜雑記

Mooさんの18日の記事、「保守とはなにか」は秀逸な論考です。
http://www.moo-azumino.com/main/Diary/2017.10/diary2017_10.html

*

ご無沙汰が続いています。
申し訳ありません。
Twitterに現を抜かしているか?
半分そうですがもう半分がありました。(過去形)

バンドでこの間大論争があったのですよ。
ご心配なく。
みんなRAJOYを終の住処と心得ていますから、解散などはありません。

どんなことを巡ってかー
バンド外の人の意見にどう対処するのかということでした。
私の意見は、考慮の余地があるものは積極的に取り入れようとするべき、です。
「取り入れる」と言っても採用するというのではなく、試してみる、ということです。
それで良いものになったと判断できたら採用ということです。

え?
当たり前じゃん?
そうですよね、当たり前です。
けれども複雑な事情が絡むとそうでもない時があるものなのですよ。

詳細は書きません。(笑)

*

明日は投票日であり、またRAJOYのプリプロの日ですが、
なんとまた台風に祟られるよう。
治雄ちゃんが弾く予定なのですが、bassが濡れてしまうのも懸念され
(車では到着時間が不明確で使用を避けている)、また電車が止まってしまったり
したら大事ということで、先々週も断念したのでした。

あーあ。

今のところ様子を見てということにしていますが、
帰り時刻にますます台風が近づいてくるわけで、これはちょっと。

*

来年の2月17日(土)にヘヴン青山(前回と同会場)でギグが決定しました。
詳細はまた後ほど。

老いても進化するRAJOYの公演、どうぞお楽しみに!


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2017 神無月雑記 2

今日東京で立憲民主党の「東京大作戦」が行なわれます。
行こうと思っていますが、どうなるか。
こういう人混みは苦にならないのですが、やることがあって、間に合うかなと。

*

前記事の反応としてMooさんからお誘いを受けました。
ありがたいの一言。

明日RAJOYのsessionです。
引き続きThe Savior。
作曲者の功君は去年SUBTLY(なつかしい)がご一緒したスエーデンのバンド、
JAERVのツアーに同行するので来られないのですが、成功を祈っております。

20171014092443.jpg


*

Henri君がとにかく積極的に動いてくれていて、本当にありがたいのです。
同じバンドのメンバーに水臭く感謝もないかもしれないけれど、
彼がどんどんとアイディアを具体化してくれて事が進むという図式です。
彼も忙しいのにね。

はっきり言って今の日本は腐りきっているんじゃないかと。
Japan qualityに重大な疑義が国際的にも呈されていると思います。
RAJOYにできることなど微々たることだけれど、
Rockでこんなバンドが日本にいるということを示したいものです。


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安曇野恋し

安曇野のMooさんが去年から松本市の「こども塾」に参加し、
無料で子どもたちの算数や数学などを教えておられます。
さらに今年からは野菜や米をその子どもたちの家庭に提供もしておられる!
むろんご自分が作られる野菜などばかりでは足りないので、
池田町の農家の皆さんに声をかけ、提供をお願いしているのです。

すごいですね。

とってつけたように教育費無償化とか言いだした与党政治家たちはMooさんの
爪の垢でも煎じて飲めばいい。

ま、自分のことを棚に上げていますけれどね。


Mooさんのところへ仲間とこの秋にお邪魔したかったのですが、
Rajoyのこともあり、スケジュールがとれない、合わないのです。
英語をお教えしている池田の子どもたちにもぜひリアルで会いたかったのですが、
入試が終わってから、つまり来春ということになりそうです。

まあ、春なら残雪もたっぷりで北アルプスは凄絶なほど美しいはず。

それまでお預けとします。



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情けない勘違い

今日はチロの32回忌です。
Twitterでは1日間違えてしまった!
オリオン昇天を10月8日と勘違いしたからで、本当は9日午前1時過ぎ。
悲しいです。

その報いでしょう、今日その時間に彼女のお墓跡へ行ったら、
晴れているのに月が煌々と輝いていて、さらに薄雲がオリオンのところだけ
かかっているのでした。そしてますます多く、厚くなっていった。

ただシリウスはさすがで、低いところでずっと輝いていました。
もちろんギラギラ感はゼロでしたけれど。


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2017 神無月雑記

昨日は安倍さんが新百合ケ丘に来るはずだったのに急遽キャンセル。
Twitterでは野次飛ばしに行こうという話が界隈で持ちきりだったので、
それを察知して、秋葉原の二の舞にならないようにということらしいのです。
自分の国の有権者をこれほど恐れて、なんで北朝鮮に毅然と対峙するなんて言えるのか。

Twitterには早速ドタキャンを詫びる運動員の方の写真が。
彼には「しんみりヶ丘」になってしまいました。

*

昨日はガリアン放送開始の「記念日」だったらしく、フォロワーの方からお知らせ
いただいて知った次第。 ^^;)
ファンの方々はそういうことを大切にしてくださる。
ファンサイトでは、OPとEDずっと聴いている、とかの書き込みがあったそうです。
ありがたいですね。

なお、33年前のことだと・・・。


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October 1st Session

昨日はHenriくんの家でプリプロ作業でした。

Henriくんが功くんの作曲した「The Saviour」を追い込んでいて、
オケの進行状況が格段に進んでおり、みんなびっくり。
Bassを入れるはずの治雄ちゃんが「こんなに進んでいてはまた練り直し」と嬉しく
ボヤく展開となりました。功くんもただただ圧倒されていました。
ギターのアイディアもHenriくんがどんどん具体化していく!

私は仮歌を入れたのですが、なんだか泣けてね。
私が功くんをRAJOYに誘った第一の理由は彼のELIXIR時代の曲をやりたいからと
いうのが第一だったんです(別に変な意味で書いていません)。
The Saviourも彼の曲と私の詩の構想が本当にうまくいったものであって、
特にコーダには私の万感を込められたのです。

みなさま、この曲は今進行が一番早いので、なんとか12月末までにはお聴かせ
したいと思っております!


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保守も革新も右翼も左翼もない。名を惜しめ!

九月も終わりですね。

こっちの方の更新カレンダーはスカスカになっている。
すみません。
Twitterの方で結局時間を取られてしまうのです。
もちろん嫌々やっているわけではなく、今フォロワーさんは3,600に近づいており、
まあ、耕せば耕す分増えているという感じです。

*

政治状況があまりにも「名を惜しまぬ者」たちばかりで作り出されていて、
本当にウンザリで、Twitterでもその辺りのことを知ったり、それに基づき書いたり
していますけれど、もうそれで飽食もいいところで、ここに書く気も起きません。

*

ひとつ思うことがあります。

私の日本人フォロワーさんの中には皇太子・皇太子妃、敬宮内親王をこよなく
思慕し、女帝誕生を期する方々がおられます。
私は、敬宮(としのみや)愛子内親王の広島についての作文を拝読して以来、
一人の少女としてもそのやさしい感性と知性に打たれ、自然にこの方こそ将来の
天皇になられたらいいのにと思うようになりました。

なぜ女性だと天皇になれないのか。
また女系天皇などもってのほかという思想が正当化されるのか、
理解できないし、理解する気も全くなくなりました。

このフォロワーさんたちは無論(?)保守的ながらも概ね穏健保守であり、
またリベラルな方も少なくなく、こうした方々が今の政治や新興小池パーティーにも
批判的であることに私は瞠目しています。
穏健保守・リベラルの勢力が団結するのを期待しておられるのです。
共産党の議員たちの主張もRTするし、共産主義の世の中は嫌だけれど、
今は一番まともな政党だとしている方が少なくないのです。

ほんとうにね。

もうウンザリです、こんな無茶苦茶な政治。
子どもたちも本当に、こんな名を惜しまぬ「選良」たちの無様さを見せつけられ、
気の毒の一言です。

こんな状況、終わらせなきゃね。


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蹉跌集め IV-3 [小説]

3

MNEMOは清に手を取られながら、にこやかにロケ車の方へ近づいてきた。

「MNEMOさん、本当にうれしいです、私のロケにお付き合いいただけてー
無理を言って申し訳ありません。」

悠奈がMNEMOの手を取りながら言った。

「清さん、ありがとうございました。狛江のご自宅まで私が看護しますから。」

「いいえ、何もしてません。」

清が言った。

「病院もちょうど休みでしたし。なんだかすごいロケになりそうですね。
ぜひ後日談をお聞かせくださいね。」

清はそう言って皆に挨拶しながら、自分のクルマに乗り込み、會津若松へ向かった。

MNEMOがロケ車に乗ると、ケンスキーがお供していいかと加賀美に訊いた。
快諾されて、彼はMNEMOの隣に座る。

「では、今日は月山の夕景をバックに悠奈さんを撮ります。」

加賀美が言った。

「今日は三日月です。日没前にはもう現れています。」

「剣のような三日月今〜だね。」

藤熊がEUROYのヒット曲の一節を歌った。
MNEMOがハハッと笑う。

「121号線で米沢を経由し、13号、それから112号を使って月山です。
今正午過ぎですから、十分一般道でも間に合います。撮影終了後は、湯殿山温泉で
宿泊です。」

みんなニコニコとして聴いている。
しかし悠奈は緊張のせいか、目をつぶって俯いているのだった。

「悠奈、君のそのままを写してもらえばいいんだから。」

ケンスキーが椅子越しに後ろから声をかけた。
悠奈はにっこりと微笑んで、MNEMOの隣へと席を移った。

「MNEMOさん、私、呼ばれているっていう実感を今ひしひし覚えていてー」

と悠奈が言った。

「うん、分かるよ、悠奈さん。確かに呼ばれているよ。」

「そうですよね。」

「あなたに纏わるいろんな<意思>が待っている。」

「意思ですか?」

「そう。それを感じ取れる人が、まあ、言ってしまえば選ばれたる人だね。」

「大丈夫だよ。」

ケンスキーが言った。

「俺もMNEMOさんに負けないほど霊力に恵まれているから。守るよ。」

「ケンスキー君の方が上だよ。」

MNEMOが苦笑して言った。

「君はwandで魔法が使えるじゃないか。Harry Potterだ。」

「僕がそれを使えるのは、意思の攻撃に対してだけです。限られてるんです。
Muggleの世界では決して使えないんです。だからズルしたことは一度もない。」

「Muggleの世界、人間界のことだね。」

「ええ。」

「意思には邪悪なものもいるの?」

「邪悪というか、不可抗力的生命への意志だね。意思はどうしても意思表示するのさ。
変な話だけど。表示するのは、3次元界にまた戻りたいからなんだよ。」

「表示すると戻れるの?」

「縁(えん)が正に縁(よすが)なんですよ。」

MNEMOが言った。

「さっきから同語反復ばっかりだけれどね。意思が意思表示するとか、縁がよすがだとか。
でもそう言うしかないんだな。縁のある人がその縁の生じたところに来ると、
意思は俄然動き出す。Vector化するというか。」

「そう。」

ケンスキーが言う。

「スカラーだったものが方向性を持つんだ。」

「むずかしいね。」

悠奈がポツンと言った。

「その縁ある人に働きかけが行われる。意思が3次元世界に戻るための。」

MNEMOがそう言って、窓外の景色はどうかと悠奈に尋ねた。

「飯豊山ですか、あれは。秀麗な姿ですね。」

「突兀七千有余尺さ。」

「とっこつ?」

「僕の高校の校歌の一部でね。そうか、飯豊の山々が見えているか。
残雪があるでしょう?」

「ええ。いっぱいありますね、まだ。」

「飯豊の語源にはいくつも説があってね。會津人は『いいとよ』とも言うんだ。
『いひとよ』は古代のことばで<フクロウ>のことなんだって。
でも『いいで』はどうなるんだっていうことになる。『湯出で』じゃないかっていう
説もあるんだ。」

「そうなんですか。出湯のある梟の山って、いいですね。」

「ハハ、合成してね。」

「あたし梟が大好きなんですよ。」

「俺も。」

ケンスキーが言った。

「そりゃそうだ。日本のHarry Potterだもんね、ケンスキー君は。」

三人は笑い、耳を傾けていた下山も藤熊も加賀美も粟田も笑った。

「さあ、そろそろ峠越えだよ。」

MNEMOがまるで窓外が見えているかのように言った。


<つづく>




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蹉跌集め IV-2 [小説]

2

バスは東北道から磐越道へと入って行く。

「え?山形道経由じゃないの?」

粟田が言う。

「ごめんなさい!」

悠奈が起立し振り返って言った。

「山形には會津から入ります。国道121号線喜多方経由で。」

「またなんで?」

「喜多方でMNEMOさんと小梅屋清(さやか)さんが合流します。」

「え〜。」

加賀美が代わった。

「MNEMOさんがこの旅にいてくださることが重要と判断しました。
その意味はきっと場面場面で理解されると信じています。
ちょうどMNEMOさんが長兄さまのご法事で會津にいらっしゃるので、お頼みしました。」

「なるほど。」

粟田が納得する。

「あいつがいれば、きっといろんなことが起こり、また解釈されるぞ。」

粟田はMNEMOの同郷・同級生なのだった。

「あと、もうひとつー」

また悠奈が立つ。

「先ほどからこのロケ車を追っている怪しいハイエースにお気付きの方は?」

粟田が「え?え?」と言いながらリア・ウィンドーから慌てたように覗く。

「あ!あれは・・・。」

RAJOYの楽器車だった。永(とこしえ)も乗っている。

「特にケンスキーさんが同行したいというたっての希望で。
なにしろ新アルバムの演奏はRAJOYに頼みますし。彼らは周平さんの近場、
錦糸町で集合して、那須高原辺りで追いついたようです。」

「え〜。」

今度は藤熊が立った。

「磐梯高原でちょっと早い昼飯休憩します。ほんとは喜多方でラーメンでもとかと
思ったんだけど、この人数じゃ厳しいんでね。そこでRAJOYと合流です。」

まもなく磐梯高原SAに着いた。

RAJOYのメンバーたちが心もちはにかむような表情で降りてきて挨拶をした。

「すごい楽しみです!」

ケンスキーが藤熊と立って談笑している。

「おお!」

粟田が北の方角を見て叫んだ。

「ほらほら、磐梯山、バッチリ!」

一同も秀麗な山塊を見て嘆声を上げた。

「こりゃ山形も晴れてるね!」

SA内の大食堂で皆は喜多方ラーメンを食した。
粟田は「まあ、合格の味だな」と言いつつも、やはり喜多方市内で食べたかったと言った。

光と幸嗣は相変わらず悠奈と永の前で不自然な寡黙を通している。
藤熊はそれが少し気になった。

「さあ、出発しますか。」

下山が言う。

「MNEMOさんたちとの合流は、喜多方駅前で正午ちょうどです。」

會津若松で高速を下り、一般道から121号線の會津縦貫北道路へ入る。
この道路はほぼ自動車専用道路になっていて、會津若松と喜多方を最短で結ぶ。

「順調だね。」

藤熊が言った。

「藤熊さん、どうです、なんか感じませんか。」

加賀美が問う。

「え?なんで。」

「ほら、MNEMOさんが言ってらした會津坂下(ばんげ)町に近づいてますから。」

「ああ、MNEMO説に拠る、藤熊家発祥の地ね。」

「ええ。」

「蘆名一族、藤熊氏はその町の一地区の名前なんだよな。でも、うん、何も感じない。」

「やっぱりそこに行かないとダメですかね。僕なんかはMNEMOさんや粟田さん、
そして川口エカさんと南アルプスの加賀美一族の土地へ行ったとき、いやはや、
すごい体験しましてね。鳥肌が立ちましたよ。」

「そうかあ。俺も行きたいな。けど、時間ないなあ。」

「また来ましょうよ。」

「そうだね。」

そんなことを話している裡に、ロケ車とRAJOYの楽器車は喜多方駅前に着いた。


<つづく>




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蹉跌集め IV-1 [小説]

1

時は経ち、晩春となった。
悠奈の月山・象潟ロケ出発日である。
関係者全員が新宿のスバル・ビル前に朝集合し、ロケバスに乗り込む。
バスが首都高に入ると、Somoこと下山聡が監督として運転席脇に立って挨拶をした。

「えー、おはようございます。
いよいよ、日本のミュージックシーンにとって得難い歌姫、佐藤悠奈さん、
すなわちJunoさんの次期アルバム用ヴィジュアル素材撮影のためのツアーがスタートです。」

自然に一同から拍手がわく。

「まずでは、悠奈さん、一言お願いします。」

悠奈は唐突さを覚えながらも、通路を挟んで運転手席左の二列目の席から
立ち上がって、お辞儀をした。

「みなさま、おはようございます。」

一同も挨拶を返す。

「天気も、山形秋田の方はまずまずらしいとのことで、安堵しています。
象潟は、芭蕉の句に因めば雨が降っていてもいいし、いいえ、むしろ降っていて
ほしいと思っていますが、晴れていたら晴れていたで、陸の小島の群れが鮮明に撮れ、
鳥海山も見えるでしょうし、それもすてきで、だからどちらでもいいという珍しい
旅です。」

皆が笑う。

「月山では逆で、絶対に晴れていてほしいのです。
なぜかー
MNEMOさんから大切な歌をお預かりしたからです。
Would You Be Mineという軽快ながらも一種の切なさ、哀切が響いてくる歌で、
MNEMOさんはずっとだれか女性のシンガーに歌って欲しかったのだそうです。
その栄誉を私がいただくことになりました。」

「構成の加賀美です。」

隣席の加賀美が立った。

「ごめんね、悠奈ちゃん、割り込んで。」

「いいえ。」

悠奈はにっこり笑って座る。

「悠奈さんとは二ヶ月半ほど、綿密に打ち合わせてきました。
スーパーヴァイザーの藤熊さん、および薗畠MUZIK社長、またホムラーの野津田
制作部長にもその構成の細部までご了解をいただきました。
そこで今悠奈さんが言われたWould You Be Mineです。
みなさん、音資料および添付書類は事前にチェックされてきたと思います。」

一同がめいめいのバッグからその紙資料を取り出す。

「悠奈さんのオリジナルは、みなさんもご存じのようにセレナーデと言うべき曲が多く、
それゆえにJunoは月の女神のようなイメージが湧くのです。
しかしローマ神話でJunoはJupiterの妻で女性最高神、結婚の神です。
Junoさんのイメージは月であってももちろんいいのだけれども、朝や昼の歌も欲しい。」

「なるほど。」

粟田が声を上げた。

「結婚を司るんだろうけれど、自身も結婚しなきゃね。」

「あ、セクハラ!」

藤熊がツッコんだ。

加賀美が咳払いする。

「Would You Be Mine、つまりプロポーズの歌ですね。
MNEMOさんによれば、なんと24年も前にこの歌が降りてきたと。
五月初旬、野川のほとりでのことだったそうです。
清々しいでしょ?そして憂愁もあるんですね、そこはかとなく。
悠奈さんは哀切と言われましたが。」

「結婚はいいことばっかじゃないからね。」

また粟田がツッコんだ。
加賀美は無視する。

「悠奈さんには月ばかりでなく、太陽と風にもなっていただきます。」

「さすが女性の最高神!なんにでもなれる!」

今度は藤熊がツッコんだ。

「きっとポップさという意味では、この曲が一番だという結論なんです。」

加賀美が大きな声で言った。

「月山では、残雪はあるでしょうが、雪が解けたところの高山植物ー
つまりはお花畑で、許される限りのイメージを撮りたいのです。
だから是が非でも月山では晴れてもらいたい!」

「大丈夫!」

粟田が言った。

「俺はすっげぇ晴れ男だからさ。」

「お腹が脹れ男だろ!」

藤熊がツッコんで、バスの中は大笑いとなった。


<つづく>



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刻一刻破滅へ向かうだけなのか

https://www.youtube.com/watch?v=pX9hL93HPMI

トランプが国連で凄まじい演説をしました。
北朝鮮の過激な物言いにとうとう同レベルで反応する米大統領を世界は戴いてしまった。
きっと三代目は苛烈な物言いと共に度胸試しをまたするでしょう。
アメリカの先制攻撃の根拠となるようなものだったらー

安倍さんは対話を一切捨て、「安保法制」で米軍と連動を確約しています。
北の攻撃力を一瞬で奪うようなことなどできるはずもない中、
日本に反撃する矛先が向かうことを覚悟しなければならない局面が来る可能性が
今最高度に高まっています。

なのに、「人づくり解散」だそうです。

何を言っているんでしょう。

日本は、極東は、今刻一刻破滅に向かっているのかもしれません。

3人の「リーダー」たちは、みんな親や祖父の七光りばかりです。
そのことがどれほどの意味を持つか分かりませんが、
苦労知らずが他者の命に寄り添う精神を養っているとは思えないのです。



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2017 長月野分の日雑記

今日は午後からHenriくんのところでのセッションでしたが、
台風で帰ってこられない心配があり、延期としました。

*

台風ばかりか、解散風も吹いているそうで、まったくいいご身分の人たちは
自分らの都合だけで国費を湯水のように使う。

*

Scalarという概念があって、これはvectorとは<向きがない>ことで異なり、
「大きさ」を持つことでそれと同じだと言います。これは物理や数学の用語ですから、
これから少しだけ記すことにその用語を使うのを嫌に思う方もいらっしゃるでしょう。
ご容赦を。

人は<意志ないし意思>のスカラーがこの世で肉体を持ったもの。
死ねばまたそれに戻っていく。

こういう突飛で面妖なことをなんと多くの胡散臭くない人が言っています。
証拠は?
それを証拠立てたら、なぜ宇宙は、存在は、生命は、生まれたのかの謎を解き、
それを証拠立てるのと同じくらいむずかしいー
結局不可能でしょうね。

*

この台風休み、せいぜい自分流に善用しましょう。



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蹉跌、悠奈、鈴木祥子さん

昨夜はSimogumiのみなさんと飲みました。
Simoちゃん、幸夫ちゃん、Kと主に話しました。

特に前者2人は『蹉跌集め』を本当に透徹した目で読んでくださっており、
なんだか申し訳なさを感じてしまうほどでした。

悠奈をもっと際立たせたいー
3人の一致した意見でした。

*

Twitterのフォロワー増加が止まらず、今は3200人台に入っています。
ありがたいことです。

昨日フォロワーさんのフォロワーさんによる鈴木祥子さんの記事をたまたま見つけ、
返信し、ひとしきりのコメント往還が。
鈴木祥子さんはsingerで、知る人ぞ知る歌姫です。
大昔、彼女に私が担当していたラジオ番組に来ていただいたことがあります。
一緒に歌うという構成作家の指示で、なんと鈴木さんはジョンのI'm So Tiredを
選ばれたのでした。驚き入ったのです。こんな選曲普通しません。
ガッチャンにギターを弾いてもらって、二人で歌いましたっけ。
それ以来何の交流もありませんでしたが、印象深さは決して薄れなかった。

歌姫、いいですなあ。

悠奈のことを語り合うことになる夜を迎える前に、鈴木さんのことをTwitterで
語り合ったことはなにか示唆的でありました。


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IS THIS AMERICA

多摩川は彼岸花が満開となっています。

この頃はTwitterでのやりとりがおもしろく、そっちにカマけてしまいます。
今はフォロワー3,100人となっており、最近は英語ネイティヴがフォローして
くださる方々の主流になりつつあります。

英語で書いたり、日本語で書いたり。
英語の場合、日本人やnon-nativeの方がつながってくださったり、
「いいね」をくださったりするというのは、当然英語ができる方ということになり、
こういう書き方をすると語弊が生じそうながら、みなさま並み以上の英語力の方々と
察することができます。

*

Henriくんが功くん作曲のThe Saviorのプリプロを昨日上げてくれて、
今度の日曜は治雄ちゃんのベースoverdubbingがあります。
楽しみです。また私も仮歌を入れろとのこと。

*

12.16のランタンBeatles Tribute Partyでは、RAJOYのメンバーも来てくれるとの
ことでして、私の本番組後のソロ・コーナーで2曲くらい付き合ってくれると。
1曲はオリジナルで、IS THIS AMERICAをやろうかと思っています。
青山でやった際の大好評だった1曲で、Henri君はヴァイオリンを弾きながら
涙が出たと。アンコールで彼がこの曲を「Bis!」と言ってくれたのは、
そういうことがあったからだと聞き、私も感激しました。

今度は功くんも混じって、ストリングスを弾いてくれます。
よりすごいIS THIS AMERICAになるでしょう。
そしてそれを録音し(別録音ですが)、YouTubeなどに上げて、アメリカの心ある方々に
聴いていただきたいと念願しています。

そうそう、Mooさんの従妹さまもこの歌が好きだと言ってくださった。
12.16、おいでになりませんか? (^^)/



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蹉跌集め III-34 (第3部了) [小説]

34

「悠奈ちゃん、私ね、驚いたことがあるんだよ。」

MNEMOが山上の茄子漬けをモゴモゴと噛みながら言った。

「どんなことですか?」

悠奈が訊く。

「悠奈ちゃんのWhen There's No-One Left to Hearを聴いたときね、
僕が新百合の丘で浮かんできたメロディーとヴァース部分が同じなんだよ。」

「ええ?そうなんですか!」

「うん。不思議なもんだね。吉祥寺で聴かせてもらった時、僕は卒倒する想い
だったよ。」

「MNEMOさんのサンフランシスコでの一件があって、あたし、たまらずに思い切り
泣きたくなって、多摩川の河原へ行ったんです。泣いて泣いて、涙も涸れたとき、
あのメロディーが降りてきました。」

「ああ。降りてきたんだよ、確かに。」

MNEMOは多摩自慢に口をつけた。

「よみうりランドの在る丘から、多摩川の悠奈ちゃんに降りてきたんだよ。」

悠奈は戦慄を感じた。

「もう疑いないでしょう。加賀美一党の武士がー 戦いに疲れきって、敵前逃亡した
侍がー 僕に、そして悠奈ちゃんに、歌ってくれと想いを託したんだよ。」

現代を生きる加賀美一党の幸夫が唸る。

「そんな話をお聞きして、私はどうすればいいというのですかね。」

幸夫が言う。

「歌はともあれ、幸夫ちゃんは戯曲や小説で遠い先祖の想いを描けばいい。」

MNEMOが言う。

「今こうして、下山聡氏を通じて幸夫くんは僕に知り合い、
さらに僕はトーホグマンという自作の荒唐無稽な小説からケンスキー君を通じ、
また吉田兼好、しら梵字、いろをし房を通じ、多摩川丘陵のふもとの多摩川で
悠奈ちゃんと知り合ったんですよ。この巡り合わせー
加賀美一党の厭戦武士の配慮もあったということでしょう。」

「そうですね。」

悠奈が言う。

「加賀美さん、きっと月山、象潟でのロケ、そしてできあがる舞台、ミュージック
ヴィデオはすばらしいものになりますよ!」

加賀美はジーンときて言葉を失ってしまう。
悠奈が多摩自慢を注ぎ足す。
加賀美はそれを呷って、

「ああ、ご先祖様よ、感謝します!」

と言った。


<第3部了>




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蹉跌集め III-33 [小説]

33

そのときチャイムが鳴った。
加賀美がインターフォンを取って応答する。

「おお!悠奈さん!」

加賀美が歓喜の声を上げる。

「根本さん、いいですか、悠奈さんなんですがー」

「もちろん!」

程なく悠奈が部屋に入ってきた。

「すみません、お二人のお話中に。」

「いやいや。悠奈ちゃんが入ってくれれば、もっと話が弾むよ。」

MNEMOが応えた。

「悠奈ちゃんも飲む?日本酒だけど。」

「あ、じゃ、ちょっとだけいただいていいですか。」

加賀美がコップを持ってくる。

「冷やでいいね。」

「ツマミは、何かしら冷蔵庫に入っているでしょ。勝手に持ってきて。」

MNEMOが言い、加賀美が近江の漬物を見つけ、

「これはいいや!」

とテーブルに持ってきた。

悠奈が呆気にとられた表情をしている。

「どうしました、悠奈さん。」

加賀美が訊く。

「これ、山上の漬物ですよね。」

「そう。看護師の小梅屋清(こうめや・さやか)さんのお母様の実家が和歌山で、
どういうことなのか、帰郷すると滋賀にも必ず立ち寄るとかでね。
お母様と一緒に清さんが正月に行った際に、現地から送ってくれたんだ。」

「近江八幡とかに参拝されるんじゃないですか?」

悠奈が言う。

「おお。そうかもね。ということは、清さんのお母様の家は八幡信仰?」

「源氏ですね。」

加賀美が言う。

「うん。今度訊いてみよう。」

MNEMOが言う。

「でも、悠奈ちゃん、どうして山上を?」

「私の母方の実家が近江なんです。琵琶湖の東で。」

「そうなんだ。」

「山上のお漬物は家でも切らしたことがないほどなんです。」

「へ〜。」

MNEMOが驚く。

「俺んちの母方も、戦国末期に近江・蒲生から會津に来たみたいだよ。遠い話だが。
氏郷さんと一緒にね。」

「縁なんですね、これも。」

加賀美が言う。

「そうなんですよ、根本さん。」

加賀美が身を乗り出す。

「僕がお邪魔したのは、悠奈さんから例の新百合の丘でMNEMOさんが
体験されたエピソードのことを聞いたからなんです。」

「え?ああ、太平記のね。」

加賀美はRAJOYの連中の「太平記戦跡紀行」の話をし、悠奈との仕事の話も
合わせてMNEMOに話した。

「いやあ、驚いたね。」

MNEMOはしみじみと言った。

「僕が新百合の丘でその存在を感じたのが、加賀美一党のひとりだったというわけか。
んんん。トーホグマンを書いていた時に、気づかなかったなあ。加賀美遠光と、
長男秋山光朝のことも書いたんだけれどなあ。」

「MNEMOさんの、多摩丘陵との地縁はどうなんですか。」

加賀美が訊く。

「長く登戸で英語を教えていたからね。民家園や枡形城趾とかも何度も行っているし。」

「RAJOYの芳樹くんは、近くの専大に通ってたんです。」

悠奈が言う。

「あ、そう。つながるねぇ。
ん〜、でもその芭蕉の月山での句、象潟、西施・・・驚きだねぇ。
幸夫ちゃんはどう発想したの?」

「いや、実はですね。昨夜藤熊師匠と悠奈さんとで狛江で飲みましてね。
帰り、藤熊さんと別れてから悠奈さんと多摩川の土手を歩いたんです。
月がきれいでしてね。十三夜くらいだったかな。なにしろ冬の澄んだ夜空ですから、
玲瓏な月光が悠奈さんを照らしましてね。あんまりジロジロ見るわけにもいかず
困りましたが、悠奈さんがなんだか月そのものに見えてしまって。」

「うん、うん。」

「家に帰りましてね、悠奈さんのステージの構成を考えました。
そもそも悠奈さんを普通の女性に設定して、普通の生き方をしている中、
突然頭の悪い為政者たちの最悪の選択、すなわち戦争でその日常を断ち切られると
いうようなことで行こうかと思っていたんですが、どう考えても、
実際に月光の下で見た悠奈さんは、やっぱり、普通じゃないんです!」

「ハハハ!」

MNEMOが笑い、悠奈は顔を赤らめた。

「月という言葉から、そして悠奈さんが信夫佐藤の裔(すえ)だということから、
月山が浮かびましてね。」

「なるほど。」

MNEMOが大きく頷いた。

「当たるね、その企画。導かれてるよ。」

そう言って、山上の茄子漬けを所望し、悠奈が箸で口に運んでくれた。
加賀美は、「目が見えないのも悪くないな」と思うのだった。


<つづく>



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戦争前夜かもしれない今

昨日のリハ。

Henri君宅は都内某所、城北地区に在り、私は本当に久しぶりに根津や千駄木の駅を
通過しました。17年ぶりかな。漱石テリトリー探索で行って以来。

大猫がいて、しかし人懐こく、かわいかった。
大の猫好きのスティックがずっとかまっていました。

Henri君の作業は始まると怒涛のようで、その瞬発的なイメージの「音化」に
いつもながら圧倒されますが、初めてそういう姿を見る功君は当然とは云え
大興奮するのでした。

Maxi singleという感じで、4曲ほどを小アルバム化するつもり。

昨日の対象2曲はいずれも反核の歌ー
なのにその作業中に北朝鮮は水爆実験。

呆れてしまう。
本当に情けない。

そしてトランプ政権も一歩また踏み込んで軍事的対処に近づくコメントを
発表しています。

なんでこんな愚劣な二人のリーダーに多くの人々の生殺与奪の権を握られてしまうのか。
北朝鮮との対話を拒む安倍政権は戦争をしたいのか。

リアルに戦争前夜なのかもしない今を、私たちは今生きています。

こんなままにしていいはずがない!


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RAJOYの初リハの日に

今日はHenri君のところでRAJOYの実質上の初リハです。

昨夜ETV特集で放送された大林宣彦監督の「花筺」に懸ける思いに触れて、
RAJOYも同じほど真剣に作品に取り組まなければいけないと強く感じています。

大林さんの故郷は広島県尾道市。
尾道を数年前訪ねました。
映画通り、坂だらけの街でした。
猫がいたるところにいて、長閑な港町なのですが、海は狭く、
こじんまりした印象で、こういうところで監督は生まれ育ったのだな、
なんだかこの街にして監督のお人柄なのだな、と思ったものです
(と言いつつ、実際を知っているわけでもなかったのですが)。

監督のお住まいは成城、私の憩いの場である野川のほとりです。
何度かお姿を見たことがあります。
Simoちゃんの恩師ということで、びっくりです。
彼が大林監督の指導を受けている頃は私がまだ彼と知り合う前のことでした。
そのとき私は野川の近くに住んでいたのです。

Simoちゃんも私も、次の作品に懸けることでは一緒。
私は面識など一切ありませんが、平和への思いを作品にする情熱について
だけでも大林監督に近づきたい。

そのSimoちゃんも1日に誕生日を迎え、昨日2日は私の亡き父の誕生日でした。
存命なら94歳でした。父も軍隊に取られた口で、平和主義者でした。

「父よ、RAJOYの音楽活動に力を貸してください」と祈りました。



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蹉跌集め III-32 [小説]

32

「アカシックレコードって、MNEMOさんご存じです?」

加賀美が言った。

「ええ。宇宙開闢以来の事象や想念、感情が保存されているっていうんでしょう、
アストラル界の光に。」

「ないしはアーカーシャの光にですね。」

「おもしろいですよね。NHKのラジオでね、広島大学名誉教授の前田宗鳳という方が、
アカシックレコードという言葉は使わずに、同じことを論じているのを聴きました。」

「ほう。広島大学名誉教授が。」

「ええ。キリスト教会に通いながら、14歳で出家して、臨済禅の僧となり、
後30いくつかのときに渡米してプリンストン大学かで比較宗教学を教える立場になり、
そこで村上春樹とも出会い、話もする仲になったそうですよ。」

「春樹、ですか。」

「彼はプロットなしで書くんだそうですよ。」

「ほう。MNEMOさんもそうでしょう?」

「ハハ。大作家と同列にされても困るけど。粟田なんか酷い言い様でね、
思いつくまま、行き当たりばったりで書く、なんてね。」

加賀美は大笑いしながら、酒をめいめいのグラスに注いだ。

「村上さん、自分が実際に行き、そこで湧いてくるイメージ・・
彼は『ヴォイス』と言っているそうですけど、それに耳を傾けていけば物語が
紡んでいけるそうですよ。」

「おお。その<土地の>記憶ですね。」

「そういうこと。彼が前世でそこに何らかのゆかりがあるのかどうか知りませんがね。
きっとなくても聞こえるんでしょうね。」

「ううむ。」

「彼の小説の特徴は想像力の根を無意識にまで下ろしていることにあるんだ、と。」

「むむ。」

「『地下一階の下にはワケのわからない空間が広がっている』と。『地下一階』とは
潜在意識で、その下というのは無意識のことだと。さらに彼は、こうも言っているとー
自分にとって小説を書くというのは、自分が経験していないことの記憶を辿るという
ことなんだと。」

加賀美は前髪を垂らして胸に刻むこむようにその言葉を噛み締め、
やおらグイッと酒を呷った。

「深い、文字通り、深いですね。」

加賀美はそう唸るように言った。

「僕はね、根本さん。学生時代にインド・ネパール、そしてチベットへ旅したことが
あるんです。」

「おお。」

「そこでね、最終的にはチベットでね、アーカーシャ光の体験をしました。」

「なるほど。村上さんの言っていることがよく、よーく分かると。」

「ええ。きっと彼も知っていますよ、少なくとも、アーカーシャ光のこと。」

「町田さんが言うには、村上さんの文体が地域的特色に依らないのは、人類普遍の
無意識との対話から物語が生まれてくるからだと。」

加賀美は「ああ!」と言って泣きそうな顔をした。

「すごい、すごいですよ、根本さん!」

「だからねー」

MNEMOが置いたグラスを少しだけ手探りしてとらえ、一口酒を啜って言った。

「村上さんとの彼我の差は大きくとも、僕も同じだなって思いましたよ、ええ。
だから、僕の書くものも地上階にいる人たちには荒唐無稽でデタラメに響くのは
当たり前なんです。僕も実は地下一階より下に彷徨うことがあるんです。」

「ええ、ええ。そうですとも!根本さんがその町田さんのラジオの話に出会うこと
自体がそれを物語っていますとも!」

加賀美は感激してMNEMOの手を取ってそう言った。


<つづく>



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12.16 MNEMO to sing BEATLES

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12月16日(土曜日)に私、Beatlesを歌います。
場所はおなじみ渋谷ランタン(井の頭線神泉駅すぐ)です。

最初は功くんとKがいるRoatlesに混ざって、Johnパート。
他に2組のタイバンが演奏して、最後は私が中心で歌いたい曲を。

RAJOYの他のメンバーにはまだ告げていませんが、
可能なら彼らにも参加してもらって、例えばHenri君のピアノで以前やったように
The Long and Winding Roadとかもいいですよね。

ランタンのオーナーとチーフは、自分で言うのもナニですが、私の熱烈なファンで、
5歳からBeatlesを歌っている私のカヴァーを楽しみにしてくださっています。

忘年会みたいなパーティー・ライブ、よろしかったらおいでください。


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戦争前夜〜そうさせてはならぬ、断じて!

さきほど文春オンラインの記事ー
「アメリカは北朝鮮に先制攻撃するしかない」
を読みました。

北朝鮮が核弾頭搭載ICBM技術を完全に持つ前に、とのことでした。
韓国と日本への報復攻撃はあるが、北の砲撃は破壊力が乏しく、南側の建物にいればよい、
日本へのミサイルは迎撃可能だ、などと。

8月の「原爆・太平洋戦争。第二次世界大戦反省月間」が終わるや、
なんの反省もなかったのでしょうね。
少数の犠牲で大多数が助かるという理屈です。
そしてその「少数」が相対的少数であって、すさまじく多数なのが戦争なのです。

呆れてしまいましたが、こういう論調がこれから増えてくるのでしょうー
いやもう多くなっているのでしょうけれども。

「まさか」が現実になってしまう一歩前なのかもしれません。

そんなことにはさせない努力が必要です。



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誕生日を迎えました。

ひとつ歳をとりました。
Kと同い年だというより、治雄ちゃんと一緒になったと言いたいのです、
激しく!

*

昨日Mick師よりフライングのお祝いメール・・・
それでもうれしかったです。
先ほどMooさんからも、Kからも。

あ、他の皆様、催促しておりませんので・・・ ^^;)

*

Twitterでもフォロワー様より多くのメッセージと「いいね」を今現在いただいております。
メッセージをくださったのはいずれも宮城の男性二人とある南の島の血を引くやさしい女性。

男性のことだけ書くと(笑)、東北人同士の言葉で会話することが親愛の情を育んだのです。
宮城(仙台)弁は會津弁とはかなり違うものの、それでも共通項はいくつもあり、
スペイン語とポルトガル語よりは小さい差だろうと思います。

仙台弁で「ほでなし」という語があることも最近その方々との会話で知りました。
會津では「へでなし」。京ことばの「本地なし」が東北へ伝播し、訛ったものです。
仏教用語ですが、「根拠がない」ということから、「あやふやな(人間、言動)」を
言うのは共通でした。

この「へでなし」は亡き父も語源不明と言っていたのですが、私が突き止めたのです。

自慢かい。

ところで、体調がすぐれないのです。
困ったものですね、1歳齢を重ねたその日に。
幸先がいいの反対。
しかし、多くの方にお祝いいただき、気持ちは元気になりました!

ありがとうございます!!


*

9月3日RAJOYはHenri邸に集い、太鼓なしのリハーサルをします。
過日上げた功くん曲と、E2aTの練りを中心に。
RAJOYこそ私の自己実現の手段であり目的でもあると思っています。
また、個人としても音楽活動をしていきたいー
できれば貪欲なまでに。

まあ、私の行動力次第ですが。

*

新たな一年、みなさまにもどうぞ温かいご声援を頂戴できれば、
これにすぐる栄誉はありません。

よろしくお願い申しあげます。




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ガリアン・Digital Remaster版

夜明けがめっきり遅くなってきました。
当たり前ですね。お彼岸まで一ヶ月を切ってしまっているのですから。
那須高原で彼岸花開花とTwitterで知りましたが、狛江でも咲き出しました。
驚くべき早さ。
北東気流で低温の、曇りや雨がちの日が続いたからに相違ありません。

今朝は久しぶりの陽光。

*

「蹉跌」ばっかり書いていて、つまらない方には申し訳ないと思っております。

Mick師には「今までとまるで違う方向に話が」と笑われました。 ^^;)
「トーホグマン化している」とも。
Kなんかは「思いつきで書いてんだから」と。

*

https://twitter.com/sunrise_music_p

『機甲界ガリアン』サウンドトラック、初のデジタルリマスター、
未収録音源も初収録で、発売決定です!大変お待たせいたしました!
続報をお待ちください!

よろしくお願いします!



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蹉跌集め III-31 [小説]

31

「まあ、でも、こういう話はロマンということでね。」

MNEMOは笑って言った。

「そんなふうに解釈できたらおもしろいっていうことでしかない。
それがインスピレーションでしょう。」

「実におっしゃるとおりですね!」

加賀美は強く同意した。

「ただねー」

MNEMOは酒を飲み干し、加賀美がすぐにそれを満たしていく。

「霊は存在するからね。」

「ええ。」

「僕は粟田と共に18の時、しっかりと幽霊を見てしまっている。
これはもうどうにもならない。私と粟田と、そのとき一緒に見た他の4人はー
当時の高校の担任、日本史の教師で唯物論者も入っていたのですがねー
自分らだけの事実・真実であっても、そうなんですよ。」

「よく分かります。長岡藩士の霊ですね。」

「と僕は解釈しているんですけどね。」

「その霊も当然自分の悲運を理解してほしい、さらに戦争の空しさをも訴えていると。」

「そのとおりです。僕に託された使命なんですよ。
だから、太平記に強い興味を持っていた頃に、多摩丘陵、新百合の丘で吹き込まれた
霊感はその延長線上での出来事だと思うんです。」

「ええ。」

「そして幸夫ちゃんにとっても、僕にとっても、ひいては粟田やSomoちゃんにとってもー
出羽の国での霊感ならさらに棒もエカ君にも、つながっていくー 悠奈ちゃんを中心に。」

「いや、MNEMOさん中心なんじゃないんですかね。」

「ハハハ!」

MNEMOは大笑いした。

「悠奈ちゃんが中心とした方が美しい!」

今度は加賀美が大笑いした。

「藤熊さんはどうなるんですかね。」

「ああ。師は坂東の人だよね。桐生の人だ。藤熊という姓はね、會津坂下(ばんげ)という
ところのー」

「『トーホグマン』で読みました。元々蘆名一族で、金上氏と同じ、戦国時代會津領だった
今の新潟県阿賀町津川の麒麟山城城主だったんですね。伊達政宗に敗れて、
決して追っ手のかからない山深いところを関東方面へ逃げて、たどり着いたのが桐生と。」

「いやあ、よく読んでくださっているなあ!」

「そしてそこで創建したのが<根本>神社なんですものね!」

「どうしてなんでしょうね。會津で縁を持ったとしか思えない。
母方の祖先は近江蒲生氏郷についてきたというのですけれどもね、もちろん、それより
以前に違う系統の母方の先祖がいたのは当然で、もしかすると、藤熊氏とつながるのかも
しれません。ただ、『根本』神社ですからね。父方との縁なのでしょうかね。
これについては、まだ霊感が降りてこない。」

二人は笑った。

「ただね。悠奈ちゃんの母方のご実家が近江だというんですよ。
唯一出てくる非東日本でね。ここでも僕につながるのかと思ってしまうんです。
あと、木野先生ね。長州生まれで、広島原爆の惨禍でご家族を失っていらっしゃる。
長州は戊辰戦争、広島はむろん核のことで私につながってくる。
さらに『きの』は『紀』でしょう?古代の紀の国の豪族ですよ。
和歌のこころを最初に説いた紀貫之を後に生み出す一族ですよ。
歌、歌です。これで決定的に木野先生とつながっていると私は信じている!

ま、僕のことはともかく、悠奈ちゃんをぜひ平和の歌姫にしたいですよね。」

「はい。静謐な月の夜のイメージで。」

「うん。」

二人はそれからも四方山話に耽るのだった。


<つづく>



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蹉跌集め III-30 [小説]

30

「夜分にすみません。」

加賀美がMNEMOに玄関先で謝った。

「いや、いいんです、どうぞどうぞ。」

MNEMOが娘の発見(ほつみ)に手を引かれながら居間に入っていく。

「どうぞ。」

発見が加賀美を招き入れる。
お茶を出して発見は家に帰ると言った。

「ああ、ありがとう。いつもすまないね。」

清が會津若松の病院へ戻ってからは発見が通ってMNEMOの世話をしているが、
なにしろ主婦の身であって、そうそう長くもいられない。
MNEMOは盲目ながらも部屋に在るものの位置関係をよく把握していたが、
さすがに食事を作ることはできなかった。

「大変ですね。」

加賀美が切なそうに言った。

「娘に迷惑かけちゃっているのがね、一番つらいね。」

MNEMOが応えた。

「で、どうしました。なんだか興奮の気色を声に感じたけれど。」

「ええ、それなんですがー」

加賀美は多摩自慢という酒の一升瓶をテーブルに置いた。

「多摩の地酒です。やりませんか。これを飲みながらお話ししたいんです。」

「ほう。多摩自慢のことかな?」

「はい。すみません、勝手にコップを持ってきます。冷やでいいですかね。」

「ああ、構いません。」

加賀美はめいめいのコップに七分ほど注いで、MNEMOの分を手渡した。
加賀美は自分のコップを持ち、MNEMOのに慎重に近づけて、

「では、今年もよろしくお願いします!」

と言い、MNEMOのコップに軽く当てた。「キン」という音がした。

「おお、久しぶりの乾杯の音だ。」

MNEMOは顔をほころばせた。
加賀美はグッと呷った。

「多摩の酒にしたのには理由がありましてね。」

そう言ってから、加賀美は微に入り細に入り悠奈との話を再現した。

MNEMOはチビリチビリやりながらじっと聴いていたが、加賀美の話が終わると、

「そうだったんですか」

と言って、居ずまいを正すようにした。

「幸夫ちゃん(加賀美のこと)が月山と象潟こそ悠奈ちゃんにふさわしい
シューティングの場所だと思ったのは、どうだろうね、偶然だろうかね。
ただ、偶然というのはない、摂理と言えと言われてしまえばそうなんだけど。」

「Providence、ですか。」

「そう。Providenceはprovideの名詞形のひとつ、天の配剤のことです。
幸夫ちゃんの自由な発想というより、悠奈ちゃんがそうイメージせしめたというか。
そしてその悠奈ちゃんの発想せしめた力がプロヴィデンスなんだろうね。」

「なるほど。」

「悠奈ちゃんは信夫佐藤の血を引くというよね。福島の県北です。山形にも程近い。
ご先祖で出羽三山巡礼をした人は多かろうと思いますよ。」

「ええ、ええ。」

「さらにね、聞くところでは、悠奈ちゃんの母方だったか、姓が市川というと。
市川は千葉にもあるけれど、どうも聞いていると甲州の市川なんですね。
市川ないしは市河は、武田冠者・源義清が常陸から配流されてきたところです。」

「義清って、新羅三郎義光の次男ないし三男で、加賀美遠光の父ですね!」

「そうなんです。歌舞伎の市川家も、ここの出身です。ただし堀越姓だけれど。
市河氏というのは義清の弟が祖になるんですね。」

「なんと・・・。私の遠い遠い親戚筋なんですね、もしかすると。」

「そうなりますね。しかもおもしろいのは、市河氏は新田義貞に呼応して北条を
攻めているんですよ。ところが後に足利方につくんです。」

「ええ?じゃあ、芳樹くんに語りかけた多摩丘陵の加賀美某と同じですね!」

「悠奈ちゃんに、幸夫ちゃんのイメージを豊かにする力があるのも当然かな。」

「実は私の母は、山形の上山の出なんです。」

「おお、蔵王の麓のね。信夫佐藤は平泉の奥州藤原氏の一族でまた陪臣だから、
勢力は広く、上山にもその子孫は多いんじゃないのかな。」

「お笑いください。ズバリ、母の旧姓は佐藤です。上山にも佐藤さんがいっぱいです。」

「やっぱりねぇ。」

MNEMOは愉快そうに多摩自慢を呷った。

「いや、見事なprovidenceじゃないですか。」

「でね、この配剤ですがー」

加賀美が身を乗り出すようにした。

「つまり、甲斐源氏と信夫佐藤・奥州藤原氏の合従連衡と言っていいのですか。」

「うまいなあ。連衡には『衡(ひら)』の字が入っている。藤原氏らしい。
因みにね、悠奈ちゃん、ある折に、新宿のどこだったか、父方の祖母の姉妹が蕎麦屋をやって
いるって言ってね。聞いたら、その祖母の家は藤原姓なんだよ。」

「出来過ぎですね。」

「本当にね。驚くばかりだ。まあ、甲斐源氏の加賀美氏については、どうだろうね、
一族の秋山光朝が頼朝に殺され、その子下山光重などは侍を捨て、子孫は寺社大工に
なっていくのだけれど、重要なのは、後に身延山に日蓮宗の本山久遠寺ができて、
下山の者は早々と帰依しているんだね。むろん加賀美遠光からは小笠原や南部という
名門武家も出ているのだけれど、長男の秋山光朝とその子下山光重の系統は、
厳しい立場になっていったとは言えるだろうね。

自分が厳しい立場だから信心するというのもあるけれど、他の幸いのためにと
信仰することもある。法華経はそういうお経でしょう?多摩丘陵の加賀美さんも、
きっと信心深い人だったんじゃないかな。厭戦なんていうのもその表れかも。
悠奈ちゃんが、顕本法華宗の寺の息子だった木野先生に惹かれるのも、
そして逆に木野先生も悠奈ちゃんに惹かれたのも、そういうことかもね。

そして信夫佐藤ですけれど、実は私にもその血は流れています。母の父は佐藤でね。
頼朝に殺された義経さんのお供をしたのも信夫佐藤ですからね。鈴木=亀井という
熊野神社神官の血筋の人もそうだったけれど。奥州藤原氏は仏国土を夢見た。
こちらは浄土信仰、阿弥陀信仰です。
できれば戦はしたくないとずっと隠忍自重してきたわけです。

まあ、結局、甲斐源氏と信夫佐藤・奥州藤原氏の合従連衡が、悠奈ちゃんを
中心に今の世に実現したということですかね。目的は厭戦を超えて、
ズバリ、反戦ということでしょう!」

「ははあッ!」

加賀美はなぜか深く頭を下げるのだった。


<つづく>



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蹉跌集め III-29 [小説]

29

「MNEMOさんは昔新百合ケ丘で英語を教えていたことがあるんだそうです。
ちょうど再デビューが決まる1年前だったそうです。」

「ほう、そうでしたか。下山と何度も一緒にMNEMOさんとは飲んだことがあるんですが、
初耳です。」

「ほんの少し前のことです。お加減はいかがっていうのもあって、ご年賀にMNEMOさんを
お訪ねしたら、散歩に連れて行ってくれないかとおっしゃって。」

「ええ。」

「多摩川の土手道を調布の方へと。途中のお地蔵様や、戦没者慰霊碑、そして水神様などに
新年のご挨拶をまだしていないから、と。」

「MNEMOさんらしいですね。」

「ええ。お参りを済ませて、もう少し歩きたいとおっしゃるので、そのまま川上の方へ。
目が見えなくても正確にご自分がどこを歩いているかお分かりになるんですよ。」

「そうですか。」

「そして、よみうりランドが対岸の向こうに見えるところまで来て、なんと指を差して、
『悠奈ちゃんはあそこに行ったことがあるかい』って訊かれたんです。
私はいいえと言いました。MNEMOさんはこう言われました。

『あのランドの丘はずっと新百合の方まで連なっていてね、小田急の登戸駅から
ロンパリの方向に来ているようだから意外なようだけど、そんなに離れていないんだ。
僕は再デビューが決まる1年前、新百合で英語を教えていてね、昼ごはん、
マックかなんかをテイクアウトで買って、新百合の駅から北の方向へ
歩いて行ったんだ、食べるところを探しながらね。

気持ちの良い風が吹く七月の下旬、でも食べるところがなくて。
その頃はまだ駅周辺は再開発整備中だったんだね。
どんどん丘の上の方へ歩いて行くことになったんだ。

木立があって、その根元のところに腰を下ろすことにして、マックの袋を切って広げて
敷いてね。食べてると、爽快な一陣の風が吹いた。
そのときね、メロディーが口をついて出てきた。
ところがね、爽快な気分にふさわしくない、マイナーのメロディーなんだね。

歌詞をはめてみると、

Too tired to go on living this way
I don't wanna fight, no more

って。
どうしてなんだろう、どうしてこんな詞がって、思ったよ。

僕はね、ちょうどその頃、大河ドラマで足利尊氏のことをやってて、興味を持ってね。
府中の郷土の森にある歴史資料の常設展示フロアに何度も通っていたんだ。
そこで新田義興とその家来由良兵庫助のことを知るきっかけを得るんだ』と。」

加賀美は唸る。

「つまり、つまりー 悠奈さんは芳樹さんに今日連れ出される前に、太平記関連のことを
MNEMOさんから聞いたばかりだったっていうことですか。」

「そうなんです。そして、昨夜加賀美さんとお会いしたんです。」

「MNEMOさんの、遠い昔に多摩丘陵で口をついて出てきた歌は、加賀美の、
戦争を忌避した者の心情、ということですか!」

「はい。そう確信しました、今日のことで。」

加賀美は顔の火照りを感じて、おしぼりを頬に当てる。

「そして高石神社のことですー」

悠奈が続ける。

「MNEMOさんは、自分の相棒の棒さん、川口エカさん、そしてSomoさんの
親御さんが秋田出身ということで、表敬訪問だと言って数年前に行っておられるんです。
同じ東北なのに一度も行ったことがないからとも。
そのとき、月山にも行き、さらに象潟にも行って!

そして、そしてです!
芭蕉は月山で西施のことを強く思い、恋い焦がれたと。
月と西施は芭蕉のそのときの恋人の<なぞらえ>だと、ブログに書いてらっしゃるんです!」

「ええッ!」

加賀美は仰け反った。

「僕もMNEMOさんのブログはたまに覗きますが、そんなことが?」

「まるで、まるで、今日のことをほぼすべて予言していたようじゃありません?」

「本当に!いや驚きました、心底。」

加賀美は、「これは今晩飲まずにはいられない」と言い、MNEMOのところへ話に
行くと言うのだった。


<つづく>




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蹉跌集め III-28 [小説]

28

新百合ケ丘の駅で悠奈が加賀美に電話すると、すぐに加賀美が現れた。

「いやあ、どうも突然にご足労をかけました。」

加賀美が言う。

「いいえ、早速構想を練っていただいてありがとうございます!」

悠奈がお辞儀をする。

加賀美が先導して、エルミロード内の珈琲屋に入る。
おしぼりで手を拭きながら、

「ちょっと混んでいますが、ここのコーヒー、うまいんで」

と加賀美が言った。
悠奈は疲れもあって、甘味を求め、ラテを頼む。
加賀美は当然のようにブレンドのブラックだ。

「早速ですが、百合丘にいらしたんですよね。なぜまたそこに?」

悠奈はラテをひと口飲んで、フーッと息を吐いた。

「加賀美さん、本当に、想像を絶する顛末なんです。」

悠奈が太平記戦跡・史跡巡りの話をする。
大学で歴史を学んだ加賀美は、熱心に聴き、最後の自分の電話とその内容がいかに
奇跡的かということを理解した。

「悠奈さん、それはー」

加賀美が一呼吸置いて、コーヒーを啜った。

「凄まじいです、ええ。これはもう、なんというか、<ついてます>ね。」

「『ついている』?」

「ええ。宛てる漢字はいくつかありますが、そのどれもいいっていう・・・。」

「<にすいにうま・したごころ>の『つく』、つまり憑依ですか、まず。」

「う〜ん、寄り添っているって感じですけれどね。」

「<にんべんにすん>も。」

「ええ。これは月という語も太陽と付きものということから来たという説がありますね。
どなたかが、太陽のような存在が、悠奈さんと共に在る。」

「あとは<着>ですか。」

「うん。着は俗字ですね。著が本字です。<集まる>という意味があります。」

悠奈は加賀美の話に再びクラクラとするようだった。
あまりにもinspirationalだからだった。

「私の先祖についてはー」

加賀美が続ける。

「出は甲斐だと聞いています。今の南アルプス市辺りだと。
加賀美遠光についても、ちょっと調べたことがありましたが、いやあ、その子孫が
矢口での義興謀殺に厭気がさして多摩丘陵の方へ敵前逃亡したっていうのは・・・
芳樹さんが聞いたんですって。」

「ええ。」

「細山に住んでいる、ちょうど大学で太平記のことを講義で聴いた・・・か。
ちなみに芳樹さんの姓は?」

「津田です。」

「んんん。斯波氏系の津田かな。斯波は足利の流れです。」

「そうなんですか。」

「それ以上紐解くのはやめておきますがね。」

加賀美はコーヒーを口に含んだ。

「僕が神奈川に住むのも、それも新百合に住むのも、お導きかな。
そして何にしても、潮音寺・高石神社の芭蕉句碑!
どういうことなんでしょう、私の発想とのつながり!」

「本当に!」

「僕はねー
そもそもSomogumiの社長Somoと、とある大手建設会社で知り合いましてね。
Somoは本名下山聡といいまして、本来ならSimoなんでしょうけれど、
『そう』や『そうちゃん』って呼ばれることも多くてSomoになったんです。
彼が、そう、2年前かな、下山のルーツは甲斐の身延町で、下山大工の末裔なんだと
言って、一緒にそこを訪ねたことがあるんですよ。

そのとき、なんですよね。加賀美遠光のことをちょっと調べたのも。
と云うのは、下山氏は加賀美遠光の長男秋山光朝の子で分家なんですね。
この秋山光朝は平重盛の娘を娶って、頼朝に睨まれ、結局殺されてしまうんです。」

「平重盛って、清盛の長男?平家の当主ですか。」

「ええ。敵将の娘をもらった裏切り者ということになってしまった。」

悠奈は一瞬気が遠くなって、その刹那に多くのことを想像した。

「下山大工というのは手練れの建築家集団で、僕が下山くんと建設会社で出会うのも
なんだか当たり前な気もしてきます。」

悠奈は目を閉じたままになった。

「僕はね、悠奈さん。その月山と象潟の撮影はSomogumiに頼もうと思っているんです。」

悠奈にはすでに月山が見えるようだった。未だに行ってはいない出羽の地。
象潟も、芭蕉も、西施も見えるようだった。

「加賀美さん、あたし、MNEMOさんからお聞きしたんです、実はー」

悠奈はそう言って、水をひと口飲んだ。


<つづく>



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蹉跌集め III-27 [小説]

27

そのとき悠奈のスマートフォンが鳴った。

「は、はい。」

予期せぬ着信とはもちろんいつも唐突なものだが、そのときは本当に悠奈の度肝を抜いた。
なんとかけてきたのが加賀美だったからだ。

「悠奈さん、すいません、突然に。」

「いいえ。」

「例のコンサートの構成についてなんですがねー」

「はい。」

「どうですか、月を全体にイメージした構成で、悠奈さんは西施になるっていうのは。」

悠奈は絶句する。
一同も悠奈のただならぬ動揺ぶりに色めき立つ。

「もしもし。失礼な質問ながら、西施ってご存じですか?」

悠奈はまだ衝撃の余波で返事ができない。

「できればね、月山を巡ってヴィデオを撮って、そしてですね、にかほ市の象潟でも、
陸に浮かぶ島々というような珍しいランドスケープで撮影してですね、
芭蕉ゆかりのところなんですがー もしもし、悠奈さん、聞こえていますか?」

「は、はい。聞こえています。」

ようやく悠奈は返事をする。

「まだ仮の話なんですが、ちょっと構想を藤熊さんにお話ししたら興味を示されて、
MUZIK、ホムラーからも仮の了解を取りつけてくださって、すでに。
僕のイメージやコンセプトについてできれば早めにお話ししたいんですよ。
悠奈さんがOKなら本決まりということでー」

「そうなんですか。ありがとうございます。」

「ついては、いかがですか、今からでも。」

「は、はい。どちらに伺えば・・・。」

「僕は新百合ケ丘に住んでいるんですよ。小田急で一本です。
和泉多摩川に僕が伺います。確か305っていうカフェがありましたよね、近くに。」

「つぶれました。」

「ありゃ。じゃあ、どうしようかな・・・。」

「私今百合丘にいるんです。」

「え!百合丘?隣じゃないですか。」

「はい。」

「じゃあー」

「私が新百合に行きます。」

「そうですか。じゃあ、駅に着いたらお電話ください。僕も今から出ます。
5分くらいで着きますので。」

「はい。了解しました。お電話ありがとうございました。」


悠奈が加賀美からの電話の内容を話すと、RAJOYのメンバーたちは慄然とした。

「来た、来たな・・・。」

芳樹が震える声で言った。

「太平記史跡巡りからこの結末。なんということだ。」

「これはどういうことなんだろう。」

ケンスキーがポツリと言う。

「まずは楽器車に戻ろう。」

幸嗣が言った。


「ヤバイよ、おい。通行の邪魔んなって、もう周回何回めか分かんねぇくらいだ。」

周平がクルマをスタートさせてからすぐに不平を言った。

「ごめんね、周平くん。」

悠奈が謝る。

「そんなに収穫があったん?」

「空恐ろしいほど。」

悠奈が呟いた。

周平はチラリと悠奈を見て、下り坂のカーブを曲がった。

「津久井街道に出たら右折な。」

芳樹が言う。

「え?まだ戦跡巡りするとこあんの?」

「いや、悠奈が新百合に行く用ができたんだ。」

「そうなの?俺たちは?」

「今日はそこでお開きにしよう。」

冬の西日が悠奈とRAJOYたちの顔を茜に染めている。


<つづく>



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蹉跌集め III-26 [小説]

26

周平楽器車は鶴川街道から高石交差点にまで続く県道へと左折した。
1キロほど行くと、多摩丘陵を登っていくカーブの多い道になった。

「周平、そうスピード出すなよ!」

幸嗣が言う。

「わり。俺こういうヘヤピンとかんなると燃えて。」

「お前、ハイエースだぞ、これ。それも6人も乗ってんだ!」

「わり。そうだったな。」

坂を登りきって、よみうりランドの入り口が左手に見える。
今度は下り坂になり、途中で芳樹が、

「この右手の藪がそうさ。<かがみ>さんが俺に話しかけてきたところ。」

津久井街道に入って、百合ヶ丘方面へ。
まもなく高石神社の看板が見え、右折して狭い坂道へと入っていく。
駐車するところを見つけるのに難渋したが、短い「取材」を条件に周平がクルマに乗った
まま待機することにしてくれて、他の者は神社へ向かった。

境内には芭蕉(桃青)や石田波郷の句碑が在る。

「雲の峰いくつ崩れて月の山、か。」

ケンスキーが読む。

「うん、芭蕉が月山で詠んだ句だな。どうしてこれがあるのか、分からないんだ。」

芳樹が言う。

「月山神社とか湯殿山神社とかとアフィリエイトっていうことじゃないの?」

「そんなことはどこにも書いてないんだよ。」

悠奈が熊野様の祠を見つけて、佇んでいた。

「どうだ、悠奈。」

芳樹が言う。

「神仏習合の潮音寺は臨済宗ね。やはり武家だわ、加賀美さんは。
ご神体に『加賀美』と書いてあるそうよ。表記もゆうべお会いした加賀美さんと同じ
だったわ。」

「ふ〜ん。で、熊野様からなにかお告げは?」

「そなたは月じゃ、って。」

「え?」

「私は月なんですって。月で西施なのだ、と。」

「西施?」

ケンスキーが言った。

「あの中国四大美人の?『沈魚美人』西施?」

「お前、ほんと詳しいな。」

芳樹が呆れて言う。

「西施が裾をまくり、脚を露わにして川で洗濯をしていると、魚たちが見惚れて
溺れちゃったんだよな、確か。」

「湯殿山で芭蕉が見たのはきっと蛤(はまぐり)なのね。」

悠奈が言った。

「熊野様もはっきり言わないの?」

芳樹が訊く。

「ええ。湯殿山神社で見たものを口外してはいけないという掟は神様同士でも守るのね。
重要なのは、芭蕉が月山、羽黒山、湯殿山と出羽三山を巡り、後に秋田・象潟で詠んだ
『象潟や雨に西施が合歓の花』という句になることよ。」

「蛤っていうのは?」

「西施は呉王が滅びる原因になった、つまり傾城の美女なのよ。敵で彼女を献上した
越王勾践の妻も西施の美貌を恐れ、呉の人も魔女扱いして彼女を長江に皮袋に入れて
捨てた。後に不思議とその辺りで蛤がよく獲れるようになったというのよ。」

「その蛤って、西施の象徴になった・・・。」

悠奈は黙った。

「湯殿山には誰も行ってないから、これ、口外にはならないよな。」

幸嗣が心配して言った。

「想像だもんな!」

「加賀美さんと西施がどう結びつくんだよ!」

光が皮肉を込めた口調で言った。

「お前、悠奈が月だっていう言葉、一番響くんじゃねぇの?」

ケンスキーがこれまた皮肉を込めて言った。
光は無言でケンスキーに殴りかかった。

「やめてッ!」

悠奈が鋭い声を発した。

「こんな場所で、よくもそんな真似ができるわね!」

光はケンスキーの胸ぐらを掴んだ手を徐々に緩めて、うな垂れた。

「この句碑自体は加賀美さんと直接関係があるわけじゃないわ。
石田波郷さんっていう昭和の俳人の句碑もあることだし。
大切なのは、インスピレーションでしょ?
ここの宮司さんであれ、氏子や信徒さんであれ、芭蕉の数ある句の中で月山の句を
選んだのもインスピレーションよ。もちろん、まずは芭蕉の句こそインスピレーション
じゃないの?あたしたち、歌のインスピレーションを得るためにここに来たんでしょ?

感じようよ、いろいろ!」

遠くでクラクションの音が聞こえた。

「周平が困ってるぞ、戻ろう。」

幸嗣が言った。


<つづく>




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蹉跌集め III-25 [小説]

25

「義興殿も後醍醐天皇から名を戴いたのじゃ。この子は義貞の家を興隆させる、と。
源氏の名門で、しかも天皇が直々に名付け親になるんだぞ。これほどの権威があるか。
儂もまだ幼さが残る義興殿を見知っていたから、尚更、嘘で籠絡し、矢口で待ち伏せて
射かけるという卑怯に堪えられなくなったんじゃ。」

芳樹のここまでの話にケンスキーが反応するー

「その甲斐の侍、姓は何と言うのじゃ。」

「かがみ、と申しはべり。」

「やっぱな。芳樹の説は相当に確度が高いよ。八幡太郎義家の弟、新羅三郎義光の
孫ないしは曾孫の加賀美遠光だろ、ご先祖は。」

「詳しいな。」

「MNEMOさんのトーホグマンで読んだよ。」

「いやあ、MNEMOさんもタダもんじゃないな。」

「いや、タダのまんじゅうだ。」

「あ?」

「いや、シャレ。義家も義光も多田(源)満仲の子孫だから。漱石も自分は多田満仲の
子孫だって書いている。夏目というのは甲斐ではないが、その北、信州の地名だ。
満仲の子孫は甲信地方にいっぱいいるんだろうな。」

「なるほど。それもMNEMOさん?」

「ああ。漱石のより近い先祖は加賀美と親戚の武田家に仕え、一説には武田最後の当主
勝頼が討ち死にする前に徳川側に寝返った、と。それを幼い頃に元旗本の家の
同級生にからかわれるのを極度に、病的に、嫌ったというぞ。」

「それもMNEMOさんから。」

「うん。」

「お前はほんと熱心なMNEMOさんファンだな。」

芳樹は半ば呆れて言った。

「芳樹、続きがあるんだろ、話してくれよ。」

幸嗣が言った。

「ああ。それでな、俺はそれからどのくらい後だったか忘れたけど、近所の高石という
ところに在る正に高石神社で流鏑馬があるっていうのをチラシかなんかで知って、
見に行ったんだ。流鏑馬って言っても、一般の人が的に矢を当てるっていうのなんだが。」

「流鏑馬とかって、小笠原流が有名じゃん。小笠原初代は加賀美の子だ。」

すぐにケンスキーが解説を加えた。

「・・・で、高石神社の縁起をそこで読んで驚いた。さっき言った、加々美という地頭の
名前が出てくるんだからな。」

「字は微妙に違うけど、表記っていうのは曖昧なもんだからな。」

ケンスキーが言う。

「MNEMOさんが言ってたよ、昔英語を登戸で教えた生徒に<鏡>という姓の男の子が
いたって。優秀な男子だったそうだ。きっとその男の子もつながるんじゃない。」

「牽強付会だな。」

光が言う。

「なんでもかんでも縁にしたがるMNEMOさんってちょっとおかしいんじゃないか。」

「彼はロマンだってちゃんと言ってる。ロマンが実証主義でなければいけなかったら、
世のフィクションはみんな死んじまうだろ!」

ケンスキーが気色ばんで反論する。

「やっぱりそうだったのね。」

悠奈がポツリと言った。

「加々美っていう名をさっき聞いた時からそうじゃないかって思ってたの。
あたしもね、トーホグマンを読んでたから。それにねー」

悠奈のポーズに男どもも静まり返った。

「ゆうべね、藤熊さんがある方を紹介してくださったの。お名前が・・・加賀美さん。」

「え〜〜〜〜ッ!」

周平が絶叫する。

「出来すぎだろ、それぇ!」

「ねぇ、その高石神社って、主祭神は?」

悠奈が芳樹に訊く。

「神明社って言われてたくらいだから、天照だよ。」

「八幡様が合祀されていない?」

「うん。されてる。さすが悠奈。俺もそこに注目した。」

「どういうこと?」

周平が訊いた。

「八幡神は源氏の守り神なんだよ。」

「なるほど。」

「熊野様も合祀されてるよ、悠奈。」

悠奈はにっこり笑った。

「行ってみたい!」

「うん、行こう。」

一同は川に向かい一礼して、ハイエースに乗り込んだ。


<つづく>




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